モロッコ音楽2

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グナワ音楽はジャジューカと比べて、よりシンプルな楽器編成である。ライタやフルートなどの管楽器は使用されず、その代わりにゲンブリと呼ばれる2〜3弦楽器が中心的な役割を果たしている。多数の管楽器がユニゾンで甲高い音色を奏でるジャジューカとは逆に、グナワではバンドのリーダーの弾く1台のゲンブリの重厚な音色がアンサンブルの要となって、この楽器によるミニマルなフレーズに手拍子や打楽器、声などが加わる構成となっている。
 このゲンブリという楽器は機能的にはベースに近いのだが、その楽器の音色は実に不思議な魅力を持っている。どちらかというと倍音の少ない暗い音色で腰の方にズシンと響いてくる感じなのだが、その暗い音色にも関わらず異様に存在感のある響きは、聴くものを異次元の世界へと誘う。また、弦のはじき方によってアタックに打楽器的な効果を付けることができ、名手によって弾かれるとベースラインとリズムが一つの楽器で表現されうる奥の深い楽器でもある。
 このゲンブリに加えて、もう一つ欠かせない楽器がある。カルカベと呼ばれる鉄製のカスタネットである。この楽器はゲンブリを担当するリーダー以外の全てのメンバーによって演奏されるがカッカカカッなどと硬質な音色で、ゲンブリが作り出した魔術的な雰囲気をさらに盛り上げ、異様な高揚感をもたらす。
 
 ゲンブリのベースラインとカルカベのリズム、鋭い人ならもうお気付きだと思うが、これはテクノの多くがベースシンセとリズムマシンの組み合わせを基礎としている構造と非常に近い関係にある。どちらの音楽も聴き手の日常的な心理感覚を奪い去りトランス状態へと導いていく特徴があり、テクノサイドから近年モロッコ音楽の再評価が高まっているのもこのあたりが注目されたからであろう。
 
 さて、このグナワ音楽の神髄に触れるには、マレーム・マームウド・ギニア Maleem Mahmoud Guinia のアルバム The Black Mlucks (Blues Interactions) を聴くのが最も近道である。ゲンブリとカルカベによるトリップ・サウンドを1時間以上にわたってたっぷりと堪能することができる。
 
 ちなみにギニアはビル・ラズウェルのプロデュースの下、ファラオ・サンダーズとの共演アルバム THE TRANCE OF SEVEN COLORS (AXIOM) も録音している。これは、ギニアのアンサンブルにファラオ・サンダーズのテナー・サックスが加わってインプロヴィゼーションを繰り広げる内容で、トランス度から見ると The Black Mlucks よりはかなり落ちるが、ファラオのスピリチュアルなプレイが非常に印象的である。ジャズと、その遠いルーツであるアフリカ音楽の再会という観点からも非常に興味深く、ファラオのプレイからも自分の祖先に出会ったような喜びのようなものがひしひしと感じられる。
 
 ちなみにビル・ラズウェルはモロッコ関連のアルバムをこの他にも私が知る限り2枚制作している。
 グナワ物では GNAWA MUSIC OF MARAKESH / NIGHT SPIRIT MASTERS (AXIOM) ジャジューカでは THE MASTER MUSICIANS OF JAJOUKA FEATURING BACHIR ATTAR / APOCALYPSE ACROSS THE SKY (AXIOM) といったアルバムをそれぞれ制作している。それぞれの音楽の多様な面を見せようとする意志が強すぎてか、ややこじんまりと、きれいにまとまってしまった印象もなきにしもあらずであるが、ビル・ラズウェルならではの非常にパンチの効いた録音、マスタリングは見事で、モロッコ音楽の持つ圧倒的なパワーが余すところなく収められている。
 
 このように、多くの欧米の先鋭的なアーティストを魅了しているモロッコ音楽であるが、当のモロッコからも伝統的な音楽を演奏するのに留まらない先進的なアーティストも活躍している。
 グナワの音楽家ハッサン・ハクムーン Hassan Hakmoun は、特にフリー・ジャズ系のミュージシャンとの共演が多く、今年になって発売された最新のアルバム Gift of Gnawa (Blue Flame) では、彼の演奏するゲンブリとヴォーカルにドン・チェリーのトランペットやフルート、アダム・ルドルフによる非モロッコ系の打楽器などが重なり、さらにディレイなどのエフェクト処理が施されることで無国籍なサウンドを生み出しているが、モロッコ音楽特有のトリップ感覚は異物が加わることによってさらに増大している。
 このアルバムの価値を著しく高めているのはドン・チェリーのフリー・ジャズという枠組みからも、さらにフリーである神がかったプレイであり、彼のトランペットやフルートとハッサンのゲンブリの絡まり合いも絶妙である。
 
 暑い夏はビールを飲みながらモロッコ音楽でトリップ、というのは如何だろうか?

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双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
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■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

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