ネヴィル・マリナー指揮によるこのシューベルト交響曲全集には「未完成交響曲」完成版(!)を含むレアなアイテムが満載です。
完成版「未完成」以外に一時期「第7番」と呼ばれていたホ長調の交響曲のスケッチ、「第10番」と呼ばれる事の多い二長調の交響曲のスケッチをそれぞれ補筆したもの、さらに交響曲の断章が2つ収められています。
とにかく目を引くのが完成版「未完成」です。
オーケストレーションも含めたスケッチがある程度残っている第3楽章はいいとしても、作曲された形跡すらない第4楽章をどうしているか?調性、オーケストラの編成が同じ「ロザムンデ」からの音楽を借用する事によってこの問題を解決しています。
逆説的ですがこの完成版「未完成」を聴く事によって、シューベルトがこの曲の3楽章以降を作曲しなかった事が非常に賢明な選択であったことがよく理解できます。
天国的な美しさを湛えた第2楽章が静かに終わり、第3楽章のトゥッティのユニゾンの音楽が始まった瞬間にそれまで続いていた心地よい緊張感が一気に崩れてしまいます。
この未完成のスケルツォは決して出来が悪いものではないのですが、とにかくそれまでの2つ楽章の美しさの後に続いて演奏する事は出来ないのです。
シューベルトがもともと意図したものではないのでしょうが、この完成された2つの楽章で完璧なバランスを達成してしまったのです。
後に続くものはいかなる音楽も蛇足になってしまいます。
古い映画で「未完成交響楽」というこの交響曲に関しての映画があって、シューベルトがピアノでこの交響曲を何人かの聴衆の前で演奏していた所、3楽章が始まった途端にある女性が大声で笑い始め、それに傷ついて第3楽章以降を破棄してしまったというストーリーなのですが、そうしたストーリーを作りたくなる気持ちも良く分かります。
そのくらいこの第3楽章が始まる瞬間は間抜けです。
ちなみにこの曲に限らず、演奏はとても手堅い仕上がりになっていますので、レア物云々という要素を省いても十分楽しめる一品となっています。


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