ケージが様々な小話(有名な「4分33秒」誕生秘話もあります)をしゃべっていくのと同時に(そして無関係に)テュードアが「ピアノとオーケストラのためのコンサート」の(単独でも演奏可能な)ピアノパートとフォンタナ・ミックスのスコアから作成したテープ音楽を90分にわたって演奏するという刺激的なアルバムです。ケージの話すひとつひとつの小話はすべて1分きっかりで話せるように作ってありますが、字数に幅があるので、話の長さによって、ものすごく早口で読んだり、単語と単語の間に長い沈黙を挟むほどゆっくり話したりと、不規則に読むテンポが変化します。ケージの話し声には不思議なヴァイブレーションがあって音として聞いているだけでとても気持ち良くなってきます。こうした特徴はウィリアム・バロウズにも共通します。
テュードアの演奏も非常に素晴らしく、ピアノの音電子音、加工された具体音などの様々な孤立した音が次々と表れては消えていきますが、この緊張感は彼でなければ出すことが出来ません。当然彼の演奏するパートはケージの不確定なスコアからリアリゼーションして作成したものですが、それに重ねてケージが不確定性に関わる様々なストーリーを話していく、というのはとても面白いアイデアです。
しばしばテュードアの演奏する音がケージの話し声をかき消して、話の一部が聴き取れなくなる所もあります。それ自体に意味やストーリーのある文章でも彼にとってはそうしたことがきちんと伝わることはそれほど重要でないのです。
実際後年になってさまざまなテキストを種々のルールに従ってカットアップによる再構成を行ったりEmpty Wordsにおいては単語すら分解されて、意味のない音素がぽつぽつと印刷されているだけのところにまで行き着きます。


コメントする