パッション

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公開当初から賛否両論の沸き起こる大きな反響を呼んだこの映画を見ました。
イエス・キリストの受難の物語は聖書を通じて多くの人の知る物語ですし、特に私自身はバッハの受難曲などの演奏を何度もやっていることもあり、この物語の詳細を以前からよく知っていました。
そういう訳で映画を見る前からストーリーが分かっているだけでなく、次にこの人がこういうセリフを言うな、ということまで分かってしまうほど内容をよく知っているのに、これほどのショックを受けてしまう映画であるとは思いもよりませんでした。

セリフは当時の人の話していたアラム語とラテン語で話されるというこだわり、登場人物の風貌、建物など徹底的に当時の雰囲気を忠実に再現し、物語も基本的に聖書のストーリーをそのまま追っています。そして、公開当初から物議を醸し出したのがイエスへの残虐な暴力シーンですが、これは本当に壮絶でした。捕まった途端にいきなりぼこぼこに殴られて片目が開かない状態になってますし(そのまま映画の最後までそのままです)、執拗に繰り返される鞭打ちのシーンも目を覆わんばかりの壮絶さです。ただの鞭だけでなく先に特殊な針のような物のついた鞭でも容赦なく繰り返し打ち続け、最終的に全身を埋め尽くす痛々しい傷の生々しさ、そうした状態で自分がかけられることになる重い十字架を担いでゴルゴタの丘へ登っていく苦しさが、ここまで厳しいものだったのかと、強く再認識させられました。
聖書の表現は非常に簡素ですし、当時の生活様式も分からないので、このように時代考証に徹底的にこだわって映像化することには大きな意味があると思います。
そして最後の十字架のシーン。。。。分かっているつもりでしたが磔刑というものがここまで残虐なものであるのか、と痛感しました。手に足に釘を打たれ、十字架を立てる前に表に裏に何度も倒され、ぼろぼろになった揚げ句に高い丘の上に醜い姿をさらされる屈辱と肉体的な苦痛のリアリティはあの映像を見ないと理解できないでしょう。
そして、そうしたリンチともいうべき残虐の限りを尽くした迫害者のために祈りましょう、という言葉をイエスが発する訳ですが、あの暴力的な映像を敢えて提示することによって、かえって彼の偽物でない深い愛が浮き立ってくるしかけになっています。

少なくとも私にとってこの受難の物語に対する理解が一気に深まったと思うし、今後受難曲のような作品を歌っていく時の姿勢というものも少なからず変わっていくと思います。

ほとんどの部分に関しては極めて卓越した作品だと思いますが、若干の不満もあります。
まず、ところどころに登場してくるサタン、なかなかそれっぽい雰囲気を醸し出していますが、この映画にこの役が必要だったのかやや疑問に残ります。
あと、イエスが死んで十字架から下ろされる感動的な場面のあとに、エピローグ風につづくイエスの復活のシーン、この1分ほどのシーンがこの映画の価値を大きく下げていると思います。受難の描写が本当に卓越していたために、この復活の描写の陳腐さにがっくりしていしまいます。
どうせやるならこの復活の場面も聖書のストーリーの通りに展開して欲しかったと思いますが、これはさすがに映像化は困難でしょうし、うまく映像化したとしてもB級SF映画のようになってしまうことでしょう。

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コメント(2)

観ていないので、あまり確かなコメントもできないのですが、昨今は教会の聖堂でも、十字架のイエス磔刑像は、無残な刑死姿ではなく、両手を広げて人々を招きいれる姿になっている場合が多いですので、この映画のような生々しい受難の描写は、物議をかもすのでしょうね。

まっちゃんのレポートを拝見によると、復活のシーンが1分程度だけというのは、さすがに困るかなと僕も思います。というか、ちゃんと描写するのなら、福音書+使徒言行録前半の記述どおりに描かなければならないのかもしれませんが、なかなか難しいでしょうね

ちなみにこの復活のシーンは聖書とは違っています。聖書ではイエスが復活する瞬間は直接記述していませんが、この映画では墓の中で復活したイエスがむくっと起き上がって天へのぼっていくようなイメージの映像になっています。
個人的には聖書の復活以降のストーリーが好きなので、ここもうまく映像化して欲しかったです。

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