
電子音楽を製作する人たちにとってはおなじみのソフトMax/MSPに付録として付いている数多くのパッチのサンプルの中にシュトックハウゼンの初期の電子音楽「習作II」が演奏できるパッチがあります。この作品のグラフィカル且つ全ての音楽イヴェントを克明に記譜したスコアが出版されていますが、そのスコアをもとにMax/MSPで演奏できるようにリアライズしたものです。演奏をスタートさせると音が鳴るだけでなく、音楽に合わせてスコアがリアルタイムで表示されるという非常に凝った造りになっています。
「ランダム・モード」というのを選択して再生させると、スコア内のイヴェントをシャッフルして演奏させる「遊び」の仕掛けもあります。
オリジナルの電子音楽がリアライズされたのは今から50年前ですから、当然このパッチでの演奏はオリジナル版より音色は非常にクリアーですが、やはり「あの時代」の空気感までは表現し切れていません。
実際シュトックハウゼンがコンピューター上でリアライズしたヴァージョン(このパッチかどうかは不明)を聞いた時もその結果に不満を感じたらしいのですが、その大きな理由が音量のエンヴェロープです。スコア上には直線で記されているこのエンヴェロープもシュトックハウゼンは手動でフェーダーを動かしてリアライズしたのですが、そこで生じる「生演奏的」なゆらぎが重要で、コンピューターでの演奏ではそこが正確すぎて気に入らない、ということのようです。
このあたりにシュトックハウゼンの電子音楽に対するスタンスが象徴的に表れていて非常に興味深いですが、シュトックハウゼン・ヲタクとしては、それでもこのパッチの存在は非常に貴重です。
ちなみにパッチに記されていたクレジットによると作曲者の許可を得てこのパッチを公開している旨が記されています。


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