2005年12月アーカイブ

gardiner-be.jpg年末です。
私は歌い手の割に年末の「第九」には学生時代からほとんど縁が無いですが、この至高の名曲を「季節もの」として大量消費をするのがいやなのでそれはそれで丁度良いです。(その代わりラトルVPOと一緒にこの作品を歌えたという貴重な経験があるのは宝です)
でも、敢えてこの曲を大晦日に聴いてみようと思い、ガーディナーのベートーヴェン交響曲全集を引っ張り出した次第です。古典派の最後を飾る作品という位置づけでの解釈で古楽器も使った演奏時間59分の快速テンポのスッキリした演奏ですが、下手をすると仰々しいだけの演奏になりがちなこの作品の本当の深遠な素晴らしさを虚心に味わうことが出来ます。この合唱を一度でも歌った方ならお分かりだと思いますが、本当に歌うのが大変で(しかしベートーヴェンには「荘厳ミサ」というさらなる難曲もあります)アマチュアの方はよく懲りずに何度も歌いたがるのだな、と逆に感心したりしますけど、ガーディナーの手兵であるモンテヴェルディ合唱団はこの難曲を楽々と、しかもありえないくらいの緻密なアンサンブルですっきりと聴かせてしまうのに唖然としてしまいます。

ちなみに多くの音大の声楽科の学生はどこかのオケの第九公演に半強制的に付き合わせられるのですが、私の大学では(少なくとも私の在学中は)それがなく、その代わり「メサイア」の公演出演が合唱の授業の単位取得で必須だったので、そちらの方にむしろ「年末」を感じます。アーメン・フーガでヴァイオリンが2声で掛け合ったあと突然トゥッティでトランペットやティンパニの響きと共に歌い始める瞬間、「年末」感が絶頂に達したものです(やっとこの長い曲の本番が終わってビールが飲める、というのもありますけど)。

何はともあれ、このサイトをご覧になっている皆さんを始め、様々な方々には本当にお世話になりました。ありがとうございます。
また来年も宜しくお願いします。

シュトックハウゼン音楽財団からクリスマス・メッセージが届きましたので日本語訳して以下に掲載します。
(ごく一部割愛)

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シュトックハウゼンはミラノ大司教Dionigi Tettamanziより2006年の聖霊降臨の祝日のための新作作曲の委嘱を受けた。

本日2005年12月26日、シュトックハウゼンはその作曲を終えた。
タイトルは

FREUDE 喜び」 2台のハープのために
(『KLANG - 1日の24時間』より「第2時間目」)

である。

世界初演は2006年6月7日午後9時よりミラノ大聖堂に於いて、二人のオランダ人のハープ奏者Marianne SmitとEsther Kooiによって行われる予定である。

1月から6月にかけて二人の演奏者のリハーサルがオランダで行われ、キュルテンでもシュトックハウゼン立ち合いのもと行われる予定である。作品の演奏時間は約30分である。

この演奏会の入場は無料である。

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タイトルが非常に「ベタ」ですけど、シュトックハウゼンの2台ハープの作品ってどういう響きなのか全く想像がつかないので逆に非常に興味があります。
メールにクリスマスツリーの前にあぐらをかいて座っている「無邪気な」シュトックハウゼン御大の写真も添付されていましたが、こちらも公式HPにその内アップされると思います。

フリー・ジャズの世界では神様ともいえるデレク・ベイリー氏が亡くなったそうです。ご冥福をお祈りします。
ネタ元は以下のサイトです。

大友良英のJAMJAM日記-はてな版- -

cellar.jpg待ちに待ったこのボックスセットが遂に発売されました。数カ月前に発売がアナウンスされていながら土壇場で何度も発売延期になっていて(甥のヴィンス・ウィルバーンが些細なことにケチを付けたのが大きな原因になっているようです)、Amazonに注文してもまた延期かな、と半信半疑でしたが、現物がようやく届きホッとしています。
この録音は1970年12月16日から19日にかけてワシントンのセラー・ドアーで行われた一連のライヴの録音で部分的には以前から「LIVE EVIL」に含まれていましたが、ここにきてその全貌がようやく明らかになりました。

何といっても若き日のキース・ジャレットとジャック・ディジョネットがマイルスと共演している、ということが大きなポイントですが、最大1時間近くのノンストップの演奏が編集なしのライヴそのままの状況で聴けるのは非常に嬉しいです。LIVE EVILに収められたテイクではジョン・マクラフリンも加わった編成での最終日の演奏が使われていますが、キースも述懐しているとおり、彼が加わることにより音楽のバランスが乱れ、演奏もやや冗長なものになっていることが、前日までの演奏と聴き比べてみてよく分かりました。キース・ジャレットが現在は決して演奏することのないエレクトリック・ピアノとオルガンを同時演奏しているところももう一つのポイントですが、この同時演奏による音色の美しさは格別です。テンション・コードを多用しないゴスペルを思わせるような明快な和声でウネウネと全体のサウンドに切り込んでいく様が全編にわたって印象的でこの時期のロック的なコンセプトにもピッタリはまっていますが、マイルスのトランペット、ジャック・ディジョネットのドラム、アイアート・モレイラのパーカッションとの有機的な絡み合いも非常に興味深いです。
ジャック・ディジョネット天才的なドラムも素晴らしいし、マイルスのプレイも非常に活き活きとしていてこのバンドの好調振りが伺えますが、やや痛いのがゲイリー・バーツのサックスでしょうか。これらの天才の神がかったプレイと比べると彼の発想の凡庸さが気になりますが、全体のサウンドにとって必要な音色ではあるのでそこには目をつむりましょう。

マイルスとキース・ジャレットのここでの共演は、キースと同じくマイルスのバンドに短期間しか在籍しなかったビル・エヴァンスとの名盤「KIND OF BLUE」での共演に匹敵する「奇跡」だと言っていいほどの貴重な記録だと思います。

前の記事で紹介したシュトックハウゼンの新作初演の主催者サイドのwebサイトでの告知を以下のURLで見られます。
http://nyme.org/stockhausen.html

ついでに主催のNew York Miniaturist Ensembleのトップページも紹介しておきます。
New York Miniaturist Ensemble

シュトックハウゼン音楽財団より世界初演のお知らせが来ましたので以下にその日本語訳(ごく一部を割愛)を引用します。

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シュトックハウゼン作曲による

1st NATURAL DURATIONS for piano
from the 3rd Hour of KLANG

の世界初演が2006年2月23日にニューヨークにて行われます。演奏は、New York Miniaturist EnsembleのピアニストPhilip Fisherによって行われます。

「1st NATURAL DURATIONS」はNew York Miniaturist Ensembleによって委嘱されました。

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先日の記事にも書いた通り24部作KLANGの「第3時間目」はそれ自体が24のピアノ作品から構成される非常に長大な作品になるようですが、今回初演されるのはその一番始めのパートです。
送られてきたメールからはシュトックハウゼンが世界初演に立ち会うかどうかは明記されていませんが、世界初演のために渡米するとなるとアメリカを訪れるのはものすごく久しぶりになるのではないでしょうか?
少なくとも公式な演奏のための渡米は「シリウス」の演奏以来のような気がしますがどうでしょう?

新企画です。
Stockhausen-VerlagのそれぞれのCDについて簡単な解説を書いていく「シュトックハウゼンCDガイド」という新しいブログを始めました。ゆっくりしたペースになるかと思いますが、最終的にはすべてのCDについての記事をまとめられれば、と思います。とりあえず現時点での最新のCDになる「プンクテ」新録音について書きました。
若い番号のCDに関しては「シュトックハウゼン音楽情報」という素晴らしいサイトにCDブックレットの邦訳がありますので、そちらに情報のない最近のCDから優先的に書きためて行きたいと考えています。

こちらからどうぞ。
http://matsudaira-takashi.jp/kstcd/

genesis.jpg1945年に7人の作曲家のコラボレーションによって作られた「創世記」組曲の新録音です。
作曲家と作品の分担は以下のようになっています。

シェーンベルク:前奏曲 
シルクレット:天地創造
タンスマン:アダムとイヴ
ミヨー:カインとアベル
カステルヌオーヴォ=テデスコ:洪水
トッホ:契約(虹)
ストラヴィンスキー:バベル

この組曲には初演の演奏者が参加したものすごく古い録音があって、数年前にCDとして発売されていましたが、今回のナクソスからのものは2000年の新録音です。まず注目すべきは冒頭のシェーンベルクの「前奏曲作品44」です。この作品は他にほとんど録音がないので非常に貴重なのですが、6分弱の短い曲ながら極めて充実した作品に仕上がっています。この短い作品の最後の方に少しだけ合唱が加わるのがネックになって演奏されにくいのだと思いますが、もっと広く紹介されるべき名作だと思います。この前奏曲は天地創造前の混沌を表していて(12音音楽をそうした概念と結びつけてしまう企画者のシルクレットの発想には賛同できませんが結果的に名作が生まれたのでよしとしましょう)、シルクレットの作品から聖書の「創世記」の物語が語り手を加えて展開されていく、という構成になっています。
緊張感に満ちたシェーンベルクの美しい作品のあとにSF映画のB級サントラのようなシルクレットの作品が続くときのあまりのギャップには唖然としてしまい(そもそもシルクレットは映画音楽のジャンルで活躍していた作曲家なのです)、それに続く作品もドビュッシーやラヴェルの影響が伺える「生ぬるい」音楽ばかりですが(これは聞き込んでいく内に印象が変わっていくかもしれません)、最後のストラヴィンスキーが(彼にとっての大傑作とは言えなくても)それなりにしっかりした作品なので少しほっとします。

一般受けしそうなのは「生ぬるい」方だと思いますが、この組曲を聴くとシェーンベルクとストラヴィンスキーがいかに偉大な作曲家であるかというのが浮き彫りになってきます。

天地創造の物語を音楽化したものはハイドンの「天地創造」をはじめとして沢山ありますが(ミヨーにもありますね)、「創世記」のそれ以降の話を題材にしたものに広げるとシェーンベルクの「ヤコブの梯子」、ストラヴィンスキーの「洪水」「アブラハムとイサク」など、様々な名作がずらずらと出て来ます。シュトックハウゼンの「光」に出てくるエーファも、アダムの妻イヴに由来したキャラクター(しばしばイエスの母マリアとも結びつけられています)だったりもしますが、こうした一連の物語は人間の精神の根源にも繋がる部分があるので音楽化の創作欲を沸き立たせるのでしょう。

東京工業大学混声合唱団コールクライネス第40回演奏会

曲目:
ラフマニノフ「晩梼」より
シュニトケ「合唱協奏曲」より
ロシア民謡
ストラヴィンスキー「結婚」

指揮:大谷研二 ピアノ:山部陽子ほか
大隅智佳子(ソプラノ) 北條加奈(アルト)
井上幸一(テノール) 松平敬(バス)
演出:高岸未朝

平成17年12月23日(金・祝) 18:30開演
昭和女子大学 人見記念講堂
入場料:1000円
http://www.chorkleines.com/concert/index.html

なんといってもピアノ4台+打楽器に合唱、独唱が加わるストラヴィンスキーの「結婚」が要注目です。
今日これから全員の初合わせなのでどうなることやら、という感じですが是非ともご来場下さい。

ある有名な日本人作曲家I氏の新作オペラの初演が数ヶ月後に控えていますが、その演奏に私の身近な人が関わっています。その関係でそのオペラの楽譜を見せてもらったり稽古の様子を聞かせてもらったりしているのですが、驚かされるのはその大御所作曲家I氏の声の扱いのひどさです。

この人は今回で3作目のオペラとなる訳ですが、第1作目のオペラを聴いた時にはやはり声の扱いのひどさにびっくりしました。(作品としての出来もあまり良くなかったと記憶しています。オーケストラの間奏曲が少し良いかな、と思った程度です)

そもそもこの作曲家I氏に関してはここ最近の作品に関しては私は全く評価していませんが、それでもオーケストレーションの技術に関してはさすがだな、と思うところもあります。この音域だとうまく鳴らないとか、この音形はこの楽器で演奏困難で実用的でない、などといった楽器の特性は演奏の現場で体験したり、過去のすぐれた作品のスコアを研究することによって習得していくことができ、それが実際のオーケストレーションに生かされていくのですが、声も楽器ですから当然得手不得手はある訳です。ところが、この新作オペラのスコアからはそうした「声」という楽器の特性を全く理解していないことがありありと読み取れるのです。

とにかく目に付くのが不必要なまでに極端な高音域が多用されていることです。テノールやソプラノのパートにはhやcisなど、通常の声楽作品だとここぞという見せ場で出てくるか出てこないか、という極端な最高音域が頻発するのですが、音楽的にその音がどうしても必要なのならば仕方ないのですが、単に器楽的な発想でメロディーラインを考えた結果そうなったとしか感じられません。その証拠に日本語のイントネーションはことごとく無視されています。時には言葉のイントネーションよりも音楽を優先させた方が良い場合もありますが、語尾の助詞の音でいきなり高音域へ跳躍してその音を延ばし続けるというのはいくら何でもセンスがないな、と思います。この人は作曲したパートの声楽部分を自分で歌ってみていないのでしょうね。

いくつかのあまりにも不合理な部分にはすでに訂正の書き込みがされていますし、初演の指揮を担当するT氏(この人は作曲家としても知られています)も、あまりにも不必要な高音が多すぎる、というような発言をしているようなので初演する頃にはかなり様子が変わっているとは思いますが、これがこの作曲家にとって初めてのオペラではなくて3作目のオペラである、ということを忘れてはなりません。オペラの制作にはそれなりの長い期間を掛ける訳ですが、2回にわたるオペラ制作に関わっていながら声楽の作曲技術が全く進歩していない、というのは作曲家としての怠慢ではないかと感じます。

今年の夏、「秋吉台の夏」に参加した時も多くの受講生の作曲家から、(興味はあるけれども)どのように声を使って作曲して良いか分からない、というようなお話も聞きましたが、日本の作曲界をリードしていく立場の人のオペラがこの有様なのでそうした状況も仕方ないのかも知れません。

最近、千住明氏が小澤・N響のコンビのために委嘱された作品(当然注目度も高くなります)の出来があまりにも酷かったと話題になっていますが、作曲家の責任もさることながら、委嘱した側の責任はもっと大きいと思います。

オペラを作曲するというのは今を生きる作曲家にとって一大事ですから、勝手に作曲して演奏の機会を待つ、なんてのんびりしたことは出来ません。演奏のための経費も莫大なものになりますから、運良く委嘱の機会がくることを待つしかないのですが、3作目のオペラにしていまだに声の基本的な扱いが分かっていない作曲家に委嘱が来る一方、ずっと前から作曲プランはあるし、機会あるごとにオペラを作曲したいと発言していても委嘱が来ないと、大御所作曲家Y氏が少し悲しげに話していた現実を見ると、なんだかなぁと思います。

そういえば三枝氏は委嘱の機会をぼーっと待っているだけではいつまでもオペラが書けないので、自分で借金して資金をつぎ込み自分で新作オペラの制作をする、という話を聞いた事があります(有名人の金銭感覚は桁違いにゴージャスですね)。そして今後20年位に作曲する予定のオペラの作曲予定年代付きの作品リスト(いってみれば未来の作品表)がチラシの裏にずらっと並んでいたのには笑いました。

sg1.jpgsg2.jpg
「セルジュ・ゲンスブール 1958-1969」「セルジュ・ゲンスブール 1970-1989」と題した2枚のDVDが発売されています。プロモーション・ヴィデオ、テレビ放送などのゲンスブールの映像をまとめたものですが、彼の全キャリアの映像がこれでもかとばかりに集められているボリュームは圧巻です。もちろん、ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、シャルロットなどゲンスブールを語る上で欠かせない彼を取り巻く女性たちの映像も収められています。
若き日のおどおどした演奏風景から、晩年の不良中年風な風貌に至るまでの変貌を見るのも楽しいですが、カッコいいんだかカッコ悪いんだか判断しかねる彼の「ビミョー」な空気感には完全に脱帽です。
音楽だけでも十分刺激的ですが、彼の場合映像作品も合わせてみた方が圧倒的に面白いです。テキトーに立ち振る舞っているだけなんですけど、なぜかそこにものすごく魅かれるんですよね。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
HMV ONLINE
TOWER RECORDS ONLINE
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