2006年3月アーカイブ

「モメンテ」の新録音、完全に気に入ってしまい、何度も聴き返しています。
この作品をより深く理解するための聴取のツボをつかみ、すっかりハマっています。
シュトックハウゼンの作品って始めなんだかよく分からなくても、何かのきっかけで突然面白さが爆発的に分かるという現象が起こる事が多いです。

それはともかく、一見大きな関係のなさそうな「モメンテ」と「光」に面白い共通点がある事にふと気が付きましたので、メモ代わりに書き留めておきます。

「モメンテ」は大きくK,D,Mという3つのモメント群に分けられますが、「光」の基礎であるミヒャエル、エーファ、ルツィファーを示す3声のフォーミュラと対応できます。
それぞれの3つの要素に支配的な音楽的性格、楽器などの割当があるところも両者の作品に共通しています。

「モメンテ」の3つのモメント群K, D, Mは単なる抽象的なものではなく、カールハインツ・シュトックハウゼン、ドリス・シュトックハウゼン(最初の妻)、マリー・バウアーマイスター(2番目の妻)という3人のイニシャルと一致する事はしばしば指摘されています。作曲当時のこの3者の複雑な関係が作品の構成にも深く影響を及ぼしていますが、Kモメントが男声、Mモメントがソプラノ独唱、Dモメントが女声合唱と深く結びついている事や、Kモメントを中心としてM,D両モメントはその前後をはさむように構成される(順序はどちらでも良い)ことがその証拠の1つとして挙げられるでしょう。
Mモメントと深く結びついているソプラノ独唱のパートがマリー・バウアーマイスターの象徴であることはシュトックハウゼン自身が述べていますし、彼女の手紙からの文章もこの作品のテキストの一部に使用されています。

このことは「木曜日」において主人公ミヒャエルが作曲者であるシュトックハウゼン自身を暗示しているところに対応します。シュトックハウゼンと2人の女性ということでいえば、「光」の作曲時期のほとんどを一緒に過ごした2人の女性、スザンヌ・スティーヴンスとカティンカ・パスフェーアとの関係がすぐ連想されます。実際、エーファを象徴する楽器のバセットホルンはスージーが演奏する事を想定しています。

ドリス、マリー、シュトックハウゼンの3人ではうまくバランスが取れませんでしたが、スージー、カティンカ、シュトックハウゼンの3者の関係は現時点に到るまで良好で、その人間関係対比も興味深いです。

「モメンテ」においてはK,D,Mの3種類のモメント群のあらゆる組み合わせが試みられたのと同様、「光」ではミヒャエル、エーファ、ルツィファーの3つの要素のあらゆる組み合わせが7つのオペラのキャラクターの違いに反映しているという共通点もありますが、これは常にセリエルに思考するシュトックハウゼンの典型的な傾向でもあります。

「モメンテ」で重要な役回りのソプラノ独唱は「光」のエーファ、「モメンテ」で使用されているただ2種類の管楽器トランペットとトロンボーンは「光」のミヒャエル、ルツィファーを象徴する楽器である事は偶然だと思いますが、今回の新録音で、ソプラノ独唱は「金曜日」のエーファ役を歌ったAngela Tunstall、器楽アンサンブルには「光」の重要な演奏者であるトランペット奏者のMarco Blaauwとトロンボーン奏者のAndrew Digbyが参加していることはそうした点からも興味深いです。

とりあえずざっと全体を聴いて見ました。

先日書いた記事の通り、今回の1998年版は、以前から発売されているヨーロッパ版と演奏順序がやや異なっていますが、それ以上に印象の異なる場所がかなりあります。
まず前回の録音から25年以上たっての新録音なので、前回の録音では完全に収めきれなかった細かい音響までクリアーに捉えられ全体的に立体的な感触が増しているので、この作品自体に対する印象がかなり変わりました。特にI(k)モメントは旧録音と比べて演奏、録音とも洗練され、今まで正直言ってあまり良さが分からなかったこの部分の魅力が分かり始めてきました。

ハモンド・オルガンのパートはシンセサイザーに置き換えられていますが、基本的にオルガン的な音色を模倣しているものの、そこから逸脱した音色が出てくる部分もあり興味深いです。「水曜日」の「世界議会」での素晴らしい合唱指揮が印象的だったRupert Huberが指揮していることにより、この「モメンテ」で極めて重要なパートであるコーラス部分のまとまりも素晴らしいです。
一番大きい違いはソプラノ・ソロでしょう。旧録音でのGloria Davyによるやや無骨な印象も受けるソロと比べてAngela Tunstallの演奏は軽やかでこの演奏の素晴らしさを際立たせるのに大きく貢献しています。

ほぼ同一の記事を「シュトックハウゼンCDガイドにも投稿しておきました。
http://matsudaira-takashi.jp/kstcd/archives/2006/03/cd80.html

Yahoo!ニュース
- 読売新聞 - 「恋のバカンス」「宇宙戦艦ヤマト」宮川泰氏死去

合掌。
ちなみに「ウナ・セラ・ディ東京」も「宇宙戦艦ヤマト」も私のカラオケのレパートリーです。

last fmというインターネット・ラジオの無料サービスがありますが、そのラジオで聴いている音楽だけでなく自分のパソコンやiPodで聞いている音楽の履歴もそのサイトで残せます。それをさらに自分のサイトで表示させるスクリプトが紹介されていたのでここで試験的に表示させてみます。
以下のリストは最近聴いた曲のリストです。

4月7日の双子座三重奏団のライヴの曲に関する情報を若干お知らせします。

M. カーゲル:ヒポクラテスの誓い(1984)
3手ピアノのための小品。つまり中川氏に加えて、曽我部氏と私もピアノを演奏します(汗)。
もっとも第1奏者はほとんど全曲にわたってピアノのボディを打楽器的に叩くだけですが。。

M. カーゲル:Rrrrrrr...(1981/82)(日本初演?)
カーゲルは同名の様々な楽器編成のための曲集を作曲していますが、今回演奏するのは声のための曲集で4曲からなっています。

1. revolution speech
2. rural blue
3. rappresentazione sacra
4. railroad song

本来は声のア・カペラ、もしくは声とピアノのための作品ですが、楽譜の注意書きに他の楽器編成で演奏する事も可能と書かれているので、トランペットも加えたスペシャル・ヴァージョンでの演奏となります。
最終曲のrailroad songではSLの録音に生演奏が加わる珍品です。

A. ルシエ:バリトンと正弦波のための音楽(1993)(日本初演?)
2声による、ゆっくりと音高をスライドさせてゆく正弦波の録音にバリトンが加わる事により生じる唸りを聞くひたすらストイックな作品です。

W. A. モーツァルト:カノン「マルスの神話を読むのは難しい」(1788)他
モーツァルトは様々な機会のためにカノンを作曲していますが、中にはモーツァルトお手製によるとんでもなく「お下劣な」歌詞を伴ったものがあることはよく知られています。日本語訳詞でも演奏する事によって、その面白さが伝わると宵のですが。。

松平敬:まそなつかか(2006)(世界初演)
倍音唱法(ホーミー)を中心とした主要部分と、それとは全く関係のない挿入部の交替による今回のライヴのための新作。

中川俊郎:海のきりん(1995)
谷川俊太郎の詞による歌曲作品。
基本的に「日本歌曲」風ではありますが、随所に中川氏らしい奇抜な逸脱があります。
その他、今回のライヴのための新作も作曲する「予定」です。

C. フォックス:「ジェネリック・コンポジション」(1999-2000)より
Generic composition#2 for a keyboard instrument
Generic composition#5 for a sliding instrument
Generic composition#6 for a valved brass instrument

曽我部清典:プレリュード「春の宵」(2006)〜一人の奏者と聴衆のための〜(世界初演)

などなど。

演奏会自体の事についてはこちらをどうぞ。

grpn-pnkt.jpg「グルッペン」の新録音が遂に発売されます。しかもカップリングが「プンクテ」決定稿の新録音でこれは最近シュトックハウゼン出版から発売されたものと同一音源です(左のジャケット画像をクリックすると発売元のサイトへ飛びます)。

「グルッペン」はエトヴェシュ、タマヨ、メルシエ指揮のケルン放送響による1997年の演奏で、(リンク先には記載がありませんが)シュトックハウゼン自身が監修、サウンド・プロジェクションを務めた「正統的」な演奏です。この音源は聴いた事がありますが、演奏、録音ともに素晴らしく、例えば一般に出回っているアバドの「糞」演奏、「糞」録音しか知らない人にとっては、曲の印象が全く変わってしまうほどの「目から鱗」の体験になると思います。

「プンクテ」決定稿についてはこちらに記事を書いてありますが、決定稿に到って「グルッペン」と比べて聴いて見ても全く遜色ないどころか、ある意味「グルッペン」よりも面白いと感じる要素もある名作だと、個人的には思います。

HMVのサイトで予約も出来ますのでリンクを貼っておきます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1376471

先日お伝えしてあった「モメンテ」の新録音(1998年版)が遂に発売されました。
詳細が以下のページに書かれています。

http://www.stockhausen.org/about_cd_80.html

この説明によると、以前から発売されているヨーロッパ版(CD7)と演奏順序が若干変更されているようですが、決定的な部分が変更されているために演奏の印象は全く異なる事が予想されます。
ヨーロッパ版では休憩の前後に配置されていた「拍手モメント」で幕を開け、ヨーロッパ版で全曲の冒頭に配置されていた長大なI(k)モメント(ずんどこどっこん、という間抜けなリズムが印象的)が休憩後の始めに移されています。
その他の部分は基本的にヨーロッパ版を踏襲していますが、この決定的な2箇所の変更がどのように聞こえるか非常に楽しみです。
「金曜日」のエーファ役を歌ったAngela Tunstallのソプラノ・ソロやシンセ・パート(本来はハモンド・オルガン)などがヨーロッパ版とどのように異なるかも興味深いですし「世界議会」の初演以来、シュトックハウゼンの合唱曲の演奏に欠かせないRupert Huberが合唱パートをどのようにまとめたのかも非常に気になります。

録音、ミックスダウンに作曲者本人が立ち会っていないのが若干痛いですが、シュトックハウゼンからの信頼の厚いメンバーの揃った演奏なので(金管パートにはMarco Blaauw、Andrew Digbyといったおなじみの名前も見えます)かなり期待できると思います。
ということで、もちろん早速注文しました。

アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて
Powered by Movable Type 4.26

2012年2月

Sun   Mon   Tue   Wed   Thu   Fri   Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      

このアーカイブについて

このページには、2006年3月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2006年2月です。

次のアーカイブは2006年4月です。

おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
HMV ONLINE
TOWER RECORDS ONLINE
amazon.co.jp
iTunes

サイト内リンク