「モメンテ」の新録音、完全に気に入ってしまい、何度も聴き返しています。
この作品をより深く理解するための聴取のツボをつかみ、すっかりハマっています。
シュトックハウゼンの作品って始めなんだかよく分からなくても、何かのきっかけで突然面白さが爆発的に分かるという現象が起こる事が多いです。
それはともかく、一見大きな関係のなさそうな「モメンテ」と「光」に面白い共通点がある事にふと気が付きましたので、メモ代わりに書き留めておきます。
「モメンテ」は大きくK,D,Mという3つのモメント群に分けられますが、「光」の基礎であるミヒャエル、エーファ、ルツィファーを示す3声のフォーミュラと対応できます。
それぞれの3つの要素に支配的な音楽的性格、楽器などの割当があるところも両者の作品に共通しています。
「モメンテ」の3つのモメント群K, D, Mは単なる抽象的なものではなく、カールハインツ・シュトックハウゼン、ドリス・シュトックハウゼン(最初の妻)、マリー・バウアーマイスター(2番目の妻)という3人のイニシャルと一致する事はしばしば指摘されています。作曲当時のこの3者の複雑な関係が作品の構成にも深く影響を及ぼしていますが、Kモメントが男声、Mモメントがソプラノ独唱、Dモメントが女声合唱と深く結びついている事や、Kモメントを中心としてM,D両モメントはその前後をはさむように構成される(順序はどちらでも良い)ことがその証拠の1つとして挙げられるでしょう。
Mモメントと深く結びついているソプラノ独唱のパートがマリー・バウアーマイスターの象徴であることはシュトックハウゼン自身が述べていますし、彼女の手紙からの文章もこの作品のテキストの一部に使用されています。
このことは「木曜日」において主人公ミヒャエルが作曲者であるシュトックハウゼン自身を暗示しているところに対応します。シュトックハウゼンと2人の女性ということでいえば、「光」の作曲時期のほとんどを一緒に過ごした2人の女性、スザンヌ・スティーヴンスとカティンカ・パスフェーアとの関係がすぐ連想されます。実際、エーファを象徴する楽器のバセットホルンはスージーが演奏する事を想定しています。
ドリス、マリー、シュトックハウゼンの3人ではうまくバランスが取れませんでしたが、スージー、カティンカ、シュトックハウゼンの3者の関係は現時点に到るまで良好で、その人間関係対比も興味深いです。
「モメンテ」においてはK,D,Mの3種類のモメント群のあらゆる組み合わせが試みられたのと同様、「光」ではミヒャエル、エーファ、ルツィファーの3つの要素のあらゆる組み合わせが7つのオペラのキャラクターの違いに反映しているという共通点もありますが、これは常にセリエルに思考するシュトックハウゼンの典型的な傾向でもあります。
「モメンテ」で重要な役回りのソプラノ独唱は「光」のエーファ、「モメンテ」で使用されているただ2種類の管楽器トランペットとトロンボーンは「光」のミヒャエル、ルツィファーを象徴する楽器である事は偶然だと思いますが、今回の新録音で、ソプラノ独唱は「金曜日」のエーファ役を歌ったAngela Tunstall、器楽アンサンブルには「光」の重要な演奏者であるトランペット奏者のMarco Blaauwとトロンボーン奏者のAndrew Digbyが参加していることはそうした点からも興味深いです。


