どたばたしていてもう2日前になりますが、ベンヤミン・コブラーによるシュトックハウゼンの新しいピアノ作品KLANG3時間目「自然の持続時間」が演奏されました。
ピアノの残響の微細な音響が大きなテーマになっている作品なので、最前列で聴きましたが、この距離でなくては聴こえない音響が沢山聞こえてきて大いに楽しめました。
音楽の進行が極めて緩慢な作品でしたが、概ね好評だったようで安心しました。
私はそのコンサートの前日、この作品に関してのレクチャーを行ったのですが、驚いたのはそこで配布した資料を希望する方が極めて多かったことです。
レクチャーに来られなかった人のために、翌日のコンサートでも急遽頒布することにしたほどですが、レクチャーの補助資料という前提で作った物ですので、正直あれだけで内容を理解出来るとは思えません。
幸いなことにコンサートで配布した曲目解説は、このレクチャーを川島氏が(演奏会の午前中に!)要約した物ですので、そちらと併せてご覧になることをお薦めします。
しかし理想的には、早ければ今年の夏に発売されるであろうCDの音源を聴きながら繰り返し学習する必要があるでしょう。
シュトックハウゼンの楽曲作品の分析に興味がある人が多いようですので、以下にいくつかの文献(英語)を紹介します。
どれも膨大な譜例、スケッチなどが鮮明なコピーで収められて文章も平易です。
すべてシュトックハウゼン出版から発売されているもので同社から直接通販可能です。
・Richard Toop著:SIX LECTURES FROM THE STOCKHAUSEN COURSES KÜRTEN 2002
(全209頁)
シュトックハウゼン講習会でToop氏によって行われたレクチャーをまとめたものです。
目次を見れば内容が理解出来るでしょう。
I. Group Composition
II. STIMMUNG
III. MANTRA
IV. KATHINKAs GESANG als LUZIFERs REQUIEM
V. ELEKTRONISCHE MUSIK mit TONSZENEN
VI. Form Schemes
ちなみに第1章の「群による作曲」はZEITMASZE, STUDIE II, ピアノ曲など50年代の諸作品のアナリーゼを交えた説明になっています。
第6章はシュトックハウゼンがまず作曲の初期段階で行う全体構造の設計図(いくつかはCDのジャケットに使われています)に関しての概観、GRUPPENからLICHTに至る広範囲の作品が取り上げられています。
・K. Stockhausen著:The Art, to Listen(全21頁)
「IN FREUNDSCHAFTの楽曲分析」と副題が付いているとおり、この作品を分析するレクチャーをまとめたものです。薄い冊子ながら、作品全体の詳細な分析を収めていて、フォルメル・コンポジションの実際を学ぶのに最適といえるでしょう。
・シュトックハウゼン講習会のコンポジション・セミナーのテキスト各種
2003年 HOCH-ZEITEN合唱版(『光』の「日曜日」より)(全72頁)
2004年 DÜFTE-ZEICHEN(『光』の「日曜日」より)(全44頁)
2005年 LICHT-BILDER(『光』の「日曜日」より)(全70頁)
2006年 HIMMELFAHRT(『KLANG』1時間目)(全56頁)
ここで取り上げたテキストは単品の読み物としての用途に堪え得る物で、膨大なスケッチのファクシミリを用いて、どのように作曲していったかが手に取るように分かります。
もちろんこの年以前のテキストもありますが、ドイツ語だったり説明が簡素だったりするので強くはお薦めしません。
特に「自然の持続時間」のアナリーゼに興味を持たれた方は、同じ24音セリーを用いている2006年のテキストに進むのがよいでしょう。24音セリー自体の説明も詳しくされていますし、この作品で特徴的なリズム・ファミリーと呼ばれる独特なリズム形成法、複雑なポリ・テンポの構造などが詳細に解説されています。