2007年8月アーカイブ

音律&微分音マニアご用達必至のソフト「Scala」というものを見つけました。
スクリーンショットなど詳しい内容は以下のサイトで見られます。
http://www.xs4all.nl/~huygensf/scala/

ここまで簡単且つ自由に音律を調整し耳で確かめられるソフトは他にはないでしょう。しかもここまで高機能で無料というのもうれしいです。各種OSのヴァージョンがありますが、Mac OS XではX11が必要です。

比率、セントのどちらでも音律を指定可能で、各種平均律(4分音や6分音による音階)、ミーントーンなども簡単に作れます。
作った音律を5度圏に表示するなど各種分析も可能で、midiキーボードに繋いで演奏することももちろん出来ます。
機械的に半音階に割り振るのでオクターヴを16個に分割するような音階でも問題なく演奏できます(但しオクターヴがキーボード上のオクターヴとずれるので注意が必要です)。

あまりに楽しくて様々な音律で即興演奏したものを録音してみました。

まずピタゴラス音律風の5音音階です。音源

次はほとんど同じ5音音階ですが純正調的なものです。3度音程が違うのが聴き取れるかと思います。音源

続いてフリギア旋法風の音律。音源

古代ギリシアのエンハーモニック(4分音)による旋法音源

高次倍音列(第60倍音以上)による微分音階です。シュトックハウゼンのXiっぽい即興演奏をしてみました。音源

続いて3分音(全音を3分割する)の音階です。音源

非オクターヴ周期の音階も当然のように作れます。
メシアンの移調の限られた旋法第2番もどきの音律ですが、オクターヴがない音階です。音源

DSCF1486.jpg
10日ほど前、宇和島の実家に帰省した時に撮った写真をアップロードしました。
こちらです→写真別館

例によってiPhotoとiWebのテンプレートでお気楽に作りましたが、スライドショーの機能は我ながら美し過ぎです。新しいiLifeも気になりますねぇ。

日本を代表するジャズ・パーカッショニスト富樫雅彦氏がシュトックハウゼンの79歳の誕生日に亡くなったそうです。

ソース:http://www.bounce.com/news/daily.php/11356/headlineclick

追悼として、ドン・チェリー、スティーヴ・レイシー、デイヴ・ホランドとの共演ライヴの「Bura-Bura」、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデンとの「Session in Paris, Vol.1」を聴きました。彼の美しく躍動する音色は世界的に見ても唯一無二だと思いますが、この「美しさ」の深みを文章で上手く表現できないのが悔やまれます。

敢えて書くとすれば、パーカッション奏者が音色を直接コントロールできるのはアタックの部分だけですが、富樫氏の音色は奏者のコントロールを離れた音が伸びている部分に特徴があります。この「残響」の温かい美しさが、共演するミュージシャンに大きなインスピレーションを与えるのではないでしょうか。

そうそう、スティーヴ・レイシーとのデュオのライヴの素晴らしい録音があるので後で聴いてみましょう。

昨日のシュトックハウゼンの分析会へお越し下さった皆さま、ご来場ありがとうございました。
この「ピアノ曲X」をメインにした大井浩明氏のリサイタル(23日)もどうぞお越し下さい。
http://www.komp.jp/07_08_23.html

かなり複雑な構造を大急ぎで説明しなくてはならなかったので、ご来場者の皆さんの復習用に、そして自分用の備忘録も兼ねて昨日のレクチャーの「ものすごく簡単な」概要を書き留めておきます。(実際に説明するのに、休憩なしで2時間かかりました。それでも説明を端折った部分もあります)

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レクチャーのベースとした文献:
HENCK, HERBERT: "Karlheinz Stockhausen's Klavierstück X"(独、英)
http://www.kompostverlag.eshop4free.de/3.esw

この作品は7種類の音素材の様々な組み合わせで作られている。
それぞれの音素材はクラスター、和音の2種類の形態で表れ得るが、和音の場合の構成音は音素材7は1音(つまり単音)〜音素材1は7音とだんだん構成音が増えていく。
クラスターの場合はその幅が音素材7の場合は長2度〜音素材1は3オクターヴ弱とこちらもどんどん幅が広くなる。
これに対応して、強度はppp〜fff、使用される音域もだんだん広くなる。
さらに、それぞれの素材には半音階的走句、アルペッジョ、クラスター・グリッサンドなどの特徴的な音形が関連付けられているので、これらの音素材の特徴を聴取するさいの手がかりになる。

作品を全体構造の基礎として7-1-3-2-5-6-4という基本セリーが使用されている。

主要部分を等しい演奏時間の7つの部分に分け、それぞれの部分がさらに下位の7つの部分に分けられ(つまり全体が49の小部分に分かれる)、第1部分は7132564、第2部分は6523174などというように7つのそれぞれの部分で7つの音素材が全て表れるように配置される(配置のルールは基本セリーに由来する)。

それぞれの小部分はあるルールに従って1〜7の持続単位が割り当てられるが、第1部は7123456、第2部は4321765などというように、やはり各部分で全ての持続単位が表れるようになっている。

7種類の持続単位は具体的には持続1の時は四分音符1個分、持続2は四分音符2個分〜持続6は32個分、持続7は64個分というように2倍ずつ増えていく。
それぞれの持続は、音の密集した動持続と、それに引き続く沈黙が支配する静持続の2つの部分に分けられ、基本持続1のときは動:静が7:0だったのが、基本持続7の時には1:6というように、持続が長くなると静持続の割合が飛躍的に増えるように計画されている。

それぞれの動持続は、例えば音素材7の場合は7つの下位の持続(それぞれの持続ができるだけ異なるように工夫されている)に分けられ、その持続がスコアの五線の上に記された音符の長さに対応する。
この下位持続の配列の方法も基本セリーから導き出した新しい表に基づいている。

49個の各小部分にはさらに別のシステムによって7段階の「密度」が設定され、これによって下位持続の中に割り振られる音符の数が決定される。

例えば、ある部分が音素材3だとすると3つの下位持続を持つことになるが、密度が3の場合は、最も長い下位持続に1-2-3-4-5-6-7の音符のグループ(つまり計28個の音符)、その次に長い下位持続に1-2-3-4-5-6のグループ、一番短い下位持続に1-2-3-4-5のグループが配置される。各グループの配置は5-2-3-1-4などのように入れ替えられるが、この作業はかなり感覚的に行われている。
それぞれの音符のグループは、クラスターと和音の配置、音域の変化などで聴取しやすいように考えられている。

ちなみにこの密度は作品の後半に行くほどだんだんまばらになり、最後の第7部分では全ての音素材の密度が1になる。

それぞれの小部分にはさらに7段階の「浸透度」というものも設定される。
ある小部分の一部で、「不純物」のように次の小部分で使用される音素材が混ぜられるがこの割合を浸透度と読んでいる。
浸透度1の場合は不純物0〜浸透度7の場合は不純物3分の1というように浸透度が増えると不純物の割合がどんどん増えていくようになっている。
この割合に従ってそれぞれの部分のどれだけ数の音符が次の部分の音素材を使用するか、というのが算出され、混入される。
「不純」な前半〜「純粋化」していく後半という大きな流れが意図されている。

各小部分の動持続の後には静持続の部分が続くが、この部分では基本的に完全な沈黙になる。但し持続が6,7(作品後半ではさらに短い持続でも)の場合に、沈黙が様々な方法で「彩られる」。
ペダリング、ハーモニクスなどによる多彩な残響の効果、先立つ動持続の音素材に対応した短い「残骸」(たとえば音素材5の場合には5つの残骸)など。

後半になると静持続での音楽事象に例外的な要素が増えていき、連続する単音の連打、メロディックな断片などがこの要素として演奏される。

7×7の主要部分に先立つ導入部は、この主要部分を圧縮したような構造を持ち、やはり7×7の部分に分けられるが、大雑把に計算して、すべての部分が主要部の7分の1の持続に極端に圧縮されている。ただし、静持続の部分が全くないので圧倒的な音群が休みなしに連なる様相を呈する。

主要部分の各小部分での動>静という構造と、圧縮された導入部>沈黙が大きな割合を占める主要部分、という全体構造が、対応している点も重要である。

基本セリーである7-1-3-2-5-6-4は両極端から中庸へという傾向を示しているが、これが作品の様々な側面でも見られる。
クラスターと和音のどちらを使用するか、という決定はある程度感覚的に行われているようであるが、全体を俯瞰すると、クラスターの割合がだんだん減少していくように計画されている。クラスター=ノイズ、和音=楽音、と見れば、ノイズから楽音の移行、というプロセスが計画されている、といえる。

主要部分の冒頭では、メロディックな音素材7の部分の後に、全てがクラスターのいくつかの部分が続き、音素材7の登場(ただしクラスターの混入度がアップ)で中断というように極端な音素材の対照が存在するが、音素材7の持続時間はどんどん縮小していくことによりこの対立も最後にはほとんど見られなくなる。

また主要部の始めの方では音群と突然の沈黙の対立が印象的だったのが、だんだん中和されていき、第7部分では動持続部分の密度も極度に下がることにより音と沈黙の対立が目立たなくなっている。(具体的にはペダル使用によるゆっくりとした音から沈黙への移行が増えている)

今年のシュトックハウゼン講習会のコンポジション・セミナーのテーマであったKLANG2時間目「喜び」のアナリーゼの非常に大雑把な概略を以下にまとめます。
それ自体で詳細な分析を理解できるスケッチや譜例満載のテキストの残部やスコアそのものは購入可能ですので、興味のある方は実際に現物をご覧下さい。

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ミラノの大聖堂での聖霊降臨祭で演奏される作品を委嘱されたシュトックハウゼンは歌も歌う二人のハーピストのための作品の構想を思いつき、歌詞としてVeni Creator Spiritusを選ぶ。この歌詞は24行の歌詞をもっているので、それぞれの行をこの曲を構成する24のモメントに対照させ歌われるように考えた。
(24のモメントはKLANGの基本コンセプトである1日の24時間に対応)

まず始めに、この24のモメントの概略がスケッチされた。一枚の紙にそれぞれのモメントのテクスチュア(図形)、中心音、対応する歌詞が書き込まれているが、この1枚のスケッチが40分近くの作品全体を俯瞰したものになっている。
このスケッチは1時間ほどで一気に書き上げられたそうである。

1時間目でも使われた24音のセリーがこの曲でも使用されている。
この内の前半の12音を長三度下げたもの(セリーの始めは長三度下降だから)が、中心音として使用され、第1,第2モメントはc、第3,第4モメントはasというように2角モメントごとに同一の中心音が使用される。

リズム構造としては1時間目のためにスケッチされた膨大な「リズム・ファミリー」がそのまま流用されている。
各モメントをスケッチからリアライズする際に、そこで示されたテクスチュアを踏襲しながら24音セリーとこのリズム・ファミリーを組み合わせることにより、半ば自動的にピッチとリズムが決定されている。
もちろん音域、ポリフォニックな音の重なりなど、厳密に規定されていない面でシュトックハウゼンの創造性が発揮されていることは言うまでもないが(そしてこの部分の詳細な分析が本当は最も重要)、ここでも各種要素がセリエルに構想されている。

6音セリーの変形のみで構成された24音セリーの繰り返しによる単調さを回避するために、さまざまな手段でこのセリーが変形される。
6音のグループに分割されたセリーをそれぞれ逆行形にして並べ替えたり、基本形と反行形を様々な方法で組み合わせて何種類もの新しいセリーを生み出している。
(各モメントの中心音として規定された音から始まる移高形が用いられている)

半音を網羅するセリーを全音階的にチューニングされたハープで演奏することはペダルの頻繁な操作が大きな問題になる。
2台のハープで異なるチューニングを施すことによって半音階を網羅するように工夫されているが、この不自由なチューニングを逆手にとって、ハーモニーの多彩さを際立たせハープとしての自然な響きを利用し尽くす作曲の重要な要素としての利用もしている。

複数の和声が長時間続く場面では、各和音の最上声部のみがセリエルに規定され、下の声部はハーピストにとって演奏しやすい指使いを考慮して自由に規定されている。そうすると下の声部の構成音はその時のチューニングに規定され、同じ指使いでも状況によって微妙に和声が異なることになる。
グリッサンドを多用する箇所でもいくつかの「折り返し地点の音」のみがセリエルに規定され(当然構造をはっきりさせるためこれらの音はアクセントをつけるなどの強調が行われる)るので、その他の音はその時のチューニングに依存する。

セリエルな構造が、ペダリングの煩雑な変更を回避するために部分的に半音ゆがめられたり、という場所すら存在している。

「光」の時のように各部分がテンポの半音階で、厳密かつ複雑に規定する方法はここでは取らず、歌詞の雰囲気などから大まかなテンポが考えられ、リハーサルを通じてそれがメトロノーム記号に確定され(但し約60などの表記も多いです)、フェルマータの長さも同様に規定される。
リズムやフレーズの長さが規則的な持続構造にならないように常に配慮されている(セリーを使用する意図の一つはここにもある)ことはいつもと同じ。
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実際のレクチャーは作品の概略の説明の後、一日に始めから数個ずつのモメントを分析していく段取りで進められました。
スケッチに示されたテクスチュアの図形と実際の音楽の関わり合いを把握した後、そのモメントのみを実演するのですが、作品全体が長くても各モメントの長さは最大でも3分程度、細切れに聴く事により作品の魅力を隅々まで味わい尽くすことが出来ました。

以下の企画でシュトックハウゼンの「ピアノ曲X」のアナリーゼを行います。

eX.5 experiment: シュトックハウゼン「ピアノ曲X」徹底解剖
2007年8月19日(日)17:00〜
STUDIO1619
講師:松平敬
eX.・公式サイト

本分析はヘルベルト・ヘンクによる同曲の詳細な分析を収めた論文をもとにレクチャーする予定ですが、ヘンクの論文はシュトックハウゼン自身のスケッチにも直接アクセスした上での分析なので非常に説得力のある文献で、これを紹介することは非常に意味があることだと思います。

クラスターやグリッサンドを多用する派手な効果の割には、後半の異様に「隙間」の多い構造も本分析を通して、その意味を理解し、より上質な聴取の道しるべにもなれば、と思います。

ところで、先月のシュトックハウゼン講習会に初めて参加した方のブログでも、講習会の感想などについて触れていますので、以下にリンクを張っておきます。

チェンバロハウス通信

この方は拙HPの記事を読んで興味を持たれて実際に参加したそうですが、率直に嬉しく感じます。

kabio.jpg最近、シュトックハウゼンの伝記(左の画像をクリックするとアマゾンの購入ページへ飛びます)を読み返していますが、改めて読んでみても幼少期のエピソードはとても興味深いです。中でも2,3歳の頃に父親が小さな木のハンマーにひもをつけてシュトックハウゼンの首にぶら下げるようにしておくと、シュトックハウゼンがそのハンマーを使ってありとあらゆるものを叩いた、という話はケッサクです。
これってKLANG4時間目の「天国への扉」で打楽器奏者がドアを20分間叩き続けるネタの遠い源泉になっているのではないでしょうか。

「少年の歌」のファクシミリ版もようやく届きましたが、15分の作品のために作成した何百枚ものスケッチには圧倒されます(それでも割愛したスケッチもまだ大量に存在していることが記載されています)。
すべてカラーのスキャン画像なので細部まできちんと読み取れますが大量のセリーの表や折れ線グラフ、膨大なかけ算や足し算の計算のメモ、テープによる電子音楽の作成に必要な各マテリアルのテープの長さなどを記した膨大なリスト、歌唱のための図形楽譜の断片の数々、などとにかく圧倒される分量です。
日付順に整理されているものの、ひとつひとつのスケッチが何を意味しているかの解析にはかなり時間がかかりそうですが、一種の写真集として鑑賞することもできる視覚的な面白さもあります。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
HMV ONLINE
TOWER RECORDS ONLINE
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