2007年10月アーカイブ

今年度のシュトックハウゼン講習会で最も衝撃を受けた電子音楽の新作「宇宙の脈動」のCDがキュルテンより到着しました。
8チャンネルの電子音楽ですが、低音から高音までの各音域に分かれた24層のメロディーのループ(それぞれテンポが異なり、独自のピッチ・ベンド、テンポ変化を伴う)が低音からどんどん積み重なっていくだけでなく、その24層が各部分で空間移動の仕方も変えるので(全部で241種類の空間移動が行われる)、キュルテンで8チャンネルのプロジェクションで聴いた時には平衡感覚を失うような異様な感覚に陥りました。
ローマで世界初演された時にテクノやヒップ・ホップのファンから猛烈な反響があったこともうなずけるドラッグ的な音響といえるでしょう。

CD化に当たってこの複雑な音響がステレオにミックスされることにより、当然、空間移動の効果は実演の100分の1に押さえられ、8チャンネルですら細部が混濁して聴こえる音響の複雑さが(作曲者もミキシングをやり直したいようです)ステレオに圧縮されることによりさらに細部は聴き取りにくくなり、実演で聴いた時の100分の1の感銘しか受けませんでしたが、それでも集中して聴いていると体が酔うような感覚になりますし、シュトックハウゼンの電子音楽の新たな傑作に加えられ得ることは間違いありません。

この音塊の密度の濃さを喩えるとなると、クセナキスの「エールの伝説」くらいしか比較対象が思いつきませんが、クセナキス作品と決定的に異なるのが全てがメロディーから構成されているということです。
24層のメロディーが同時に演奏される部分(約10分間)では、個々のメロディーを聴き取る事は極めて困難で、表面的にはクセナキス的な音響にも近いのですが、集中して聞くとメロディーの断片の集積であることがなんとか認知できます。

32分の作品本体の後に「付録」として24のそれぞれのレイヤーの冒頭90秒を、独立して聴けるようになっていますが、レイヤー24から1へと聴き進めると、音域がだんだん上昇、テンポもだんだん加速(1音の基本持続が6.4秒から0.03秒へ)していく様子が手に取るように分かります。
24のそれぞれのメロディーの構成音は1〜24音とすべて異なっていますが、例のKLANGの24音セリーから導き出されていることが一聴して分かりますし、ループされたメロディーが前述の通り不規則なピッチ・ベンドやテンポ変化(このカーブも3分ごとにセリエルに交替する)を伴うため決して単調さに陥ることはありません。

キュルテンで包み込まれるような音響条件で聴いた時には暴力的にも聴こえた音の密度が、ステレオで「客観的に」聴いて見ると、最も複雑な箇所ですら極めて美しく響いていることに初めて気付きました。

Mac OS X 10.5 Leopardにアップグレードしました。
最近新しいiMacを買い、その関係でLeopardが1000円程で手に入るということで、各種ソフトの対応状況が落ち着いてからインストールしようと思い、とりあえず注文したのですが、いざ現物を目にすると我慢できず思わずインストールしてしまいました。

とりあえず、日常的に使うソフトは問題なく使えますし、心配していたFINALE、LOGIC、MAX/MSPなどの音楽関連のソフトもきちんと動きます(これから思わぬ不具合に遭遇する危険もありますが)。

アップグレード直後、私が日本語入力で使用しているegbridgeで漢字の変換ができなくなるトラブルがありましたが、以前からカスタマイズしていたキーボード・コマンドの割当を削除してやり直したら問題なく動くようになりました。

まだ完全にシステムが安定している訳ではありませんが、システムの起動や各種動作がものすごく速くなり、新機能もツボを心得ていてとりあえず満足です。

i.ching.jpg先日の川島氏によるケージ企画の打ち上げは、打ち上げ会場の店の選定、食べ物や飲み物の注文の選定などの様々な選択を、テューバの橋本氏所有のサイコロでケージ的に決めるという、チャンス・オペレーションにこだわったものでしたが、ケージがチャンス・オペレーションの手段で利用した易経をコンピュータ上で実現するソフト「i.ching」を見つけました。

Mac OS Xをご利用の方のためにはWidgetがありますので、デスクトップで楽しめます。
http://homepage.mac.com/akhmon/i.ching.html

その他のOSをお使いの方もFlash版で楽しめます。
http://homepage.mac.com/akhmon/flash.i.ching.html

先日行った、現代声楽曲のレクチャー&ワークショップのレポートと写真が主催者の日本現代音楽協会のサイトにアップされていますので以下のリンクよりご覧下さい。

http://www.jscm.net/

本日はベルリン国立歌劇場の「モーゼとアロン」を東京文化会館で見てきました。
私にとって非常に重要な作曲家であるシェーンベルクの傑作オペラですが、とにかく上演困難な演目で、日本で次いつ見られるのか分からないこの作品をバレンボイムの指揮で見られる、ということで大枚をはたいて駆けつけてみました。

おそらく一番の難関が複雑なコーラス・パートのリハーサルですが、アマチュア・コーラス並みに2年かけて準備したそうで、ただ立って歌うだけでも大変であろう至難な部分も複雑な演技を伴って余裕すら感じさせる演奏を披露していました。CDの録音などで聴いてもコーラス・パートが混濁している事が多いので全く期待していませんでしたが、ライヴでこれだけ出来れば上等でしょう。

オーケストラも若干の事故や集中力の途切れそうな箇所があったものの、基本的には非常に丁寧に仕上げられていて歌手との音量や音色のバランスもうまく取れていました。もっともシェーンベルクの室内楽を思わせる緻密なオーケストレーションが素晴らしいというのもありますし、ケーゲルの演奏にみられる異常な集中力と比べるとかなり「ゆるい」ともいえますが。

演出はモーゼ、アロンも含むすべての歌手がマトリックスのエージェント・スミスを思わせる黒いスーツとネクタイ、サングラスという衣装で統一され、黄金の仔牛も巨大な「エージェント・スミス」像(但し何故か首が取れている)に置き換えられていました。
モーゼの起こす軌跡も、2幕の乱痴気騒ぎもすべて象徴的に置き換えられ、ステージとしては非常にストイックなものでしたが、民衆はアロンの生み出す「偶像」の虚像を虚空に見ていたのでしょうか?この辺、マトリックスの仮想現実世界の設定にも繋がる気もしますが。。
「黄金の仔牛の踊り」では暗闇の中で盲人用の杖を思わせる蛍光灯のような棒が踊っていた(持っているのは合唱のメンバー)ことも、彼らには真実が見えていない、という象徴であるかのようにも思われます。

二人の主役であるモーゼとアロンを演じた歌手は演目の大変さを考えると極めて安定した歌唱であったといえますが、アロン役のトーマス・モーザーに若干疲れが見られたのが惜しかったです。

気になったのが聴衆の反応です。
引越公演でこのような難曲を持ってきた心意気に(そしてもちろん高水準な演奏にも)私は大きな拍手を送りたいと思っていたのですが、実際の聴衆の反応はなんとも生ぬるく儀礼的な拍手で、シェーンベルクの偉大な音楽もモーゼの言葉と同様、いまだ理解され得ぬものなのだな、と痛感しました。

突然ですが、明日以下の企画に飛び入り出演することになりました。

eX.6 ケージ「Solo for piano」完全上演
2007年10月16日(火)19:00開演 18:30開場
渋谷・公園通りクラシックス
¥3000 (予約¥2500)

ジョン・ケージ 《Solo for Piano》 (1958)  
《Solo for Tuba》 (1958) 《Song Books》(1970)ほか

[出演] 川島素晴 pf, etc. 山根明季子 pf, etc.
特別ゲスト:橋本晋哉 tuba, etc 松平敬 voice, etc.

ご予約、詳細な情報は主催者のサイトまで
(本当に直前に決まった話なので私のクレジットはのっていません)

メインは図形楽譜による超大作《Solo for Piano》 の2時間に及ぶ「全曲」演奏ですが、この作品と同時演奏可能なテューバや声の作品を重ね合わせての演奏で、リハは一度もやっていないので、どのような響きになるのかは私も全く想像がつきません。

様々な組み合わせで同時演奏可能なケージ作品の仕様、私自身がケージのレパートリーがそれなりにある、ということで、突然長時間ケージの作品を演奏するとなっても、どうにかなってしまうのです。

otonakagaku.jpg以前から「ふろく」が何かと気になっていた「大人の科学マガジン」ですが、最新号の「ふろく」がテルミンと知って慌てて買いに走りました。
池袋のリブロに立ち寄ったら「完売、次回入荷11月」ということで、こんなマニアックなものが飛ぶように売れてるのか、と軽く驚きつつ別の本屋を探してようやくゲットしました。

ハンダ付けの様な作業は不要でネジで止めたり部品を差し込むだけで作業は簡単に終了、乾電池をセットしてスイッチを入れると、「あの」音が鳴り響きテンションが軽く上がります。手のひらに乗る小さなサイズですけど、てのかざし方でピッチが変わり色々と遊んでみました。楽器本体に手で触るだけでピッチが変化するほど繊細な仕組みですが、なんちゃってメルツバウ風なノイジーな音響を生み出す裏技を発見したりもして、今後の演奏会でもちょっとした飛び道具として使えるかもしれません。

stimmung.jpgポール・ヒリアーによるシュトックハウゼンの「シュティムング」の新録音が発売されました。
ヒリアーは以前にもハイペリオン・レーベルに同曲を録音してそちらも好内容ですが、この新録音もかなりのレベルに達しています。ちなみにこの録音ではヒリアーはディレクターとしてのみの役割で歌ってはいません。最新の録音技術を生かし、この作品で最も重要な、虹のような倍音の動きを見事に捉えています。
母音の変化〜倍音によるメロディー〜口笛や気息音によるメロディー、といった音色の変化が絶品です。

シュトックハウゼン出版から発売されている初演者による録音は、もっとオン・マイクでリバーブもかなり少なめで目の前で演奏されているような音像ですが、このヒリアー盤ではリバーブがかなり多めでやや遠くから演奏を聴いているような音像になっています。
スコアの指定では舞台中央で6人の歌手が輪になって演奏し、マイクで増幅された声が聴衆のまわりに設置された6つのスピーカーから再生されるようになっていますが、その聴衆が音に包まれるような状況を考えると、このミキシングには疑問を感じます。

とはいえ、シュトックハウゼン自身とも深くやり取りをした上で臨んだ録音だけあって、前述の倍音の響きなどはシュトックハウゼン出版盤を上回る部分もあり、一聴の価値があるといえるでしょう。

以下の企画に出演しますのでお知らせします。

MoVE 現代声楽レクチャー&ワークショップ
2007年10月13日(土)午後2時〜 スペースDo(新大久保駅より徒歩5分)
入場料/無料(要予約)
入場予約方法/10月12日(金)17時までに下記問合せ先へお申込みください。
ワークショップ参考曲(抜粋演奏)/
 Xenakis: Kassandra
 Stockhausen: Die 7 Lieder der Tage
 Berio: Sequenza III
 Lachenman: temAほか
出演/太田真紀(ソプラノ) 松平 敬(バリトン)
お問合せ、ご予約/日本現代音楽協会事務局 Tel: 03-3446-3506 Fax: 03-3446-3507
チラシ(pdf版)>>http://www.jscm.net/images/move.pdf

現代声楽作品における様々な声の取り扱い方をレクチャーと実演によって解説し、聴衆の皆さまにもいくつかの唱法を体験して頂くワークショップと組み合わせた企画です。
声を使った新しい試みに興味のある作曲家、声楽家の方はもちろん、声に興味のある全ての方に御越し頂ければと思います。
入場無料というのが大きなポイントですが、小さな会場ですので、お早めの申込を御薦めします。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

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