バレンボイムの「モーゼとアロン」

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本日はベルリン国立歌劇場の「モーゼとアロン」を東京文化会館で見てきました。
私にとって非常に重要な作曲家であるシェーンベルクの傑作オペラですが、とにかく上演困難な演目で、日本で次いつ見られるのか分からないこの作品をバレンボイムの指揮で見られる、ということで大枚をはたいて駆けつけてみました。

おそらく一番の難関が複雑なコーラス・パートのリハーサルですが、アマチュア・コーラス並みに2年かけて準備したそうで、ただ立って歌うだけでも大変であろう至難な部分も複雑な演技を伴って余裕すら感じさせる演奏を披露していました。CDの録音などで聴いてもコーラス・パートが混濁している事が多いので全く期待していませんでしたが、ライヴでこれだけ出来れば上等でしょう。

オーケストラも若干の事故や集中力の途切れそうな箇所があったものの、基本的には非常に丁寧に仕上げられていて歌手との音量や音色のバランスもうまく取れていました。もっともシェーンベルクの室内楽を思わせる緻密なオーケストレーションが素晴らしいというのもありますし、ケーゲルの演奏にみられる異常な集中力と比べるとかなり「ゆるい」ともいえますが。

演出はモーゼ、アロンも含むすべての歌手がマトリックスのエージェント・スミスを思わせる黒いスーツとネクタイ、サングラスという衣装で統一され、黄金の仔牛も巨大な「エージェント・スミス」像(但し何故か首が取れている)に置き換えられていました。
モーゼの起こす軌跡も、2幕の乱痴気騒ぎもすべて象徴的に置き換えられ、ステージとしては非常にストイックなものでしたが、民衆はアロンの生み出す「偶像」の虚像を虚空に見ていたのでしょうか?この辺、マトリックスの仮想現実世界の設定にも繋がる気もしますが。。
「黄金の仔牛の踊り」では暗闇の中で盲人用の杖を思わせる蛍光灯のような棒が踊っていた(持っているのは合唱のメンバー)ことも、彼らには真実が見えていない、という象徴であるかのようにも思われます。

二人の主役であるモーゼとアロンを演じた歌手は演目の大変さを考えると極めて安定した歌唱であったといえますが、アロン役のトーマス・モーザーに若干疲れが見られたのが惜しかったです。

気になったのが聴衆の反応です。
引越公演でこのような難曲を持ってきた心意気に(そしてもちろん高水準な演奏にも)私は大きな拍手を送りたいと思っていたのですが、実際の聴衆の反応はなんとも生ぬるく儀礼的な拍手で、シェーンベルクの偉大な音楽もモーゼの言葉と同様、いまだ理解され得ぬものなのだな、と痛感しました。

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コメント(6)

>シェーンベルクの偉大な音楽もモーゼの言葉と同様、いまだ理解され得ぬものなのだな、と痛感しました。

ヤフオクでCDを出品していると気づくのですが、新ウィーン楽派の音楽は、現代音楽のコーナーに出品すると、古いといって嫌われ、室内楽等のコーナーに出品すると難解だということで、なかなか買い手がつきません。

僕が20世紀前半の音楽を勉強しようと思い立ったのも、実は僕も同じような印象を持っているからなのだと思います。

まぁフォーレやラヴェルなども20世紀音楽なわけですけど

新ヴィーン楽派でもベルクならロマン派の延長線上で聴ける部分もあるし、ヴェーベルンはブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノ、ケージ、フェルドマンなどに繋がって行く要素が大きいので、それぞれの方面から興味を持つ人も多いように思えますが、シェーンベルクは無調、12音技法の「開祖」として忌み嫌われるか、逆に12音技法を使用してから新古典的な作風へ保守化してしまったと非難されるかのどちらかで、非常に受け入れられにくい環境にあるように思えます。

実際に演奏したり、スコアを研究したりすればするほど良い意味で職人的な優れた作曲家だと実感するのですが、そこまで深い付き合いをしてくれるファンというのは非常に少なく感じます。

あらら、18日はお客様の反応がイマイチだったようですね。
15日はなかなかのものでしたよ。
5回くらいアンコールがありました。

ちなみに安いお席の方が反応が良く、
私のいた4階席はブラボーの嵐でした。
ちなみに、三つとなりが、ピアニストの寺嶋さんでした。
(乗り出して観戦されていました)

良い公演でも、他のお客様が儀礼的だと
なんだか悲しくなりますね・・。

>スピカさん

へえ、そうだったんですか。。
バレンボイムの今回の来日公演、ありえないくらい色々なコンサート、オペラを詰め込んだ上で「モーゼとアロン」をやる、という無謀な試みだったのですが、その労をねぎらうためにも暖かい拍手が欲しかったところです。

少なくとも国内のプロダクションでこの難曲をやるのはあと30年は無理でしょうから、バレンボイムのような力のある人に強引に演目に組み込まれるのを期待するしかないですから。。

Wienの最近の「モーゼとアロン」のコーラスは昔の半分以下の40回で暗譜演技を付けさせたそうです。というのはコーラスがもうはじめからピアノ無しで歌える水準になっているからだそうです。

僕が見たのはゲッツ・フリードリッヒの旧演出でしたが、拍手はもっとやって欲しいのでパルテレまで降りて最後までしました。

Kan-noさん>
ウィーンというのは国立歌劇場合唱団のことでしょうか?
アーノンクールのモーツァルトでの共演などかなりひどい演奏ばかり聴いていますが、水準は上がってきたのでしょうか?

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