2008年1月アーカイブ

数日前、シュトックハウゼン出版から何やら小包が到着しました。
最近何か注文した記憶はないのに何だろうと開けてみると、昨年のシュトックハウゼン講習会で私が演奏した「シュピラール」の映像が収められたヴィデオ・テープでした。今まで出演した時にはこのような物はもらったことがなかったのですが、この演奏はシュトックハウゼンとの最後の共演になる訳で、記念になるだろうと気を効かせて送ってくれたのだと思います。

しかし、困ったことにPAL方式のVHSで送られてきたため、通常の日本のヴィデオ・デッキでは再生できず(そもそも我が家にはVHSがありません)、業者に頼んでDVD-Rに移し替えてもらいました。本当に撮ったままの状態のコピーだったので、自分でiMovieを使って最低限の編集を施し、簡単な字幕をつけ形を整えました。
シュトックハウゼンが声とラジオの音質、音量をどのようにバランスをとり整えたのか、リアルタイムでは知りえなかったので、ヴィデオで客観的に見られたのは良かったです。

di-arezzoから以前頼んでおいたブソッティの譜面もいくつか届きました。
今月上旬の演奏会に関わっていた関係で、彼の図形楽譜のあり方に興味を持ち、注文してみたのです。
楽譜というよりはほとんど画集のAutotono(1977)の大竹伸朗的なぶっ飛び具合も良いのですが(申し訳程度に音符や楽器指定があるのもツボ)、一緒に注文したPieces de Chair II(1958/60にはさらに度肝を抜かされました(先日同曲の演奏でピアノを弾いていた新垣氏の演奏の意味も納得しました)。

55ページからなるこの作品、楽器編成は「ピアノ、バリトン、女声ソロ、いくつかの楽器のための」とあるのに、いきなり楽譜の冒頭が「デヴィッド・テュードアのためのピアノ小品」の歌いながら超絶技巧のパッセージを弾くピアノのための楽譜で、通常の五線譜なのにすでに図形楽譜的なヴィジュアル(一部謎の図形的な記譜あり)、めくっていくたびに楽器編成も一見しただけではよく分からない図形楽譜と通常の(しかしかなり異形の)五線譜が延々と続き、このヴィジュアル的なインパクトはケージの「ピアノとオーケストラのためのコンサート」のピアノ独奏パートと双璧をなすと言えるでしょう。もっとも重要な違いは、細かく演奏法の指定のあるケージの図形楽譜に対して、ブソッティのそれにはそうした指定が一切ないということですが。。。(この作品の楽譜の中にブソッティの図形楽譜を解読する鍵となる実例を発見したことだけは報告しておきましょう)

この作品は、様々なアイデアによる小品が集まっているのですが、ピアノ・ソロ、バリトン+ピアノ、などの編成はともかく作品によっては多数の管楽器や打楽器も含む室内オケのような作品や、オンド・マルトノを含むものまで混在していて全曲を演奏しようとすると、練習以前の下準備にかなりの苦労が予想されます。

本日、京都で直観音楽アンサンブルという団体を作りシュトックハウゼンの直観音楽演奏の研鑽に励んでいる中路正恒さんより、「7つの日より」の「正しい持続時間」の録音が郵送されてきました。
短いテキストから即興演奏をしなくてはいけないこの作品は、安易な取り組みによっていとも簡単に駄演になりかねない危険も孕んでいますが、このCD-Rに収められていた演奏は、真摯な研鑽が伺える素晴らしい仕上がりで非常に驚きました。60年代後半の「シュトックハウゼン・バンド」による演奏の肌触りとの共通点も感じると共に、日本人らしい独特な時間感覚、音色感覚にこの団体の個性を感じました。この演奏を聴いたとしたら、シュトックハウゼン本人も喜んだに違いありません。今後もこうした活動を続け、様々な場所で演奏の機会を持つことを期待します。

kaeruru.jpgタイトルの言葉は、草野心平の「定本 蛙」の抜粋、蛙語の詩です。この奇妙な詩に作曲家の中辻小百合さんが曲をつけた「ごびらっふの独白」が今週の木曜日に初演されますが、私も蛙として演奏に参加しますのでお知らせします。

国立音楽大学大学院修了演奏(作曲専攻・作品発表)
2008年1月31日(木)13:00開演
国立音楽大学・講堂小ホール
入場無料

中辻小百合:ごびらっふの独白
  〜バリトン独唱、男声五重唱、室内オーケストラのための〜
 指揮:夏田昌和
 バリトン独唱:松平敬 ほか

佐藤丈治:白妙郷
 箏:竹澤悦子、山野安珠美
 十七絃:中井智弥

現在発売中の「レコード芸術」「音楽の友」(いずれも2月号)にシュトックハウゼンの追悼記事がのっていますのでお知らせします。

「レコード芸術」には片山杜秀、沼野雄司の両氏による記事がのっています。その内容には部分的に疑問を感じる点があるものの、(某新聞の追悼記事と比べるとはるかに)「まともな」記事だと思いました。
シュトックハウゼンは、きちんと聴いた事もない作品に対しての筋違いな批判など「まともでない」論評をされることが普通なので、ベストではないにしても「まとも」であることはとても重要です。
ちなみに片山氏の「天国の扉の正しい開き方」の文章に私が撮影した写真(当ブログでも掲載したもの)が掲載されています。シュトックハウゼンが天国の扉の向こう側へ去っていくように見える写真です。

沼野氏の記事の中で「祈り」を日本で演奏する提案をしたことが書かれていましたが、実はカティンカから日本の○○が指揮する○○交響楽団で「祈り」を演奏したいと打診してきているが、その指揮者やオーケストラのことを知っているか、という問い合わせが私に来ていたので、おそらくそれが沼野氏の提案の企画だったのだろうと思います。
シュトックハウゼン側はオーケストラに1週間ほどのリハーサル期間を要求し、それでは経費が莫大なものになるので実現しなかった、と書いていますが、それは沼野氏の言う単なる「完璧主義」だけからではなく、本当にそれくらいのリハーサルを積まないとまともな演奏ができないからなのです。
「祈り」のスコアを見れば、弦楽器の配置が通常と左右逆だったり、オーケストレーションが極端に細かかったりとその演奏の困難さは一目瞭然です。
しかも各小節ごとにテンポが細かく変化する(1小節内で複数のテンポを持つ所もある)ので、指揮者にとってもその負担は極めて大きなものとなります。シュトックハウゼン自身が指揮をする時も数カ月前から「指揮の練習」をしていたことが伝えられていますし、あのエトヴェシュが初めてこの作品を演奏した時も、彼がそれまで指揮した中でもっとも指揮の難しい作品と述べたほどのものですから、その大変さは想像がつくと思います。
沼野氏も触れている通り、この作品は第一勧銀で委嘱されたのにも関わらず日本初演がいまだなされていません。もともと小澤征爾氏が指揮の予定だったのが、彼が作品のコンセプトに賛同できずキャンセルしたのですが、この作品はマイムを含む実演で見ないと真価は全く分からないので、いつの日か日本で演奏されることを期待します。

「音楽の友」の方の記事は日本におけるシュトックハウゼン研究の第一人者、清水穣氏のもので、某新聞記事に対する辛辣な批判から始まる痛烈な文章です。最後に、シュトックハウゼンにとっては「自分の音楽だけが絶対的に重要である」という記述がありますが、さらに補足すれば、「自分自身」よりも自分の「音楽」が重要であるといえます。
「自分はいつか死ぬけれども、自分の作品は後世に残っていく」という彼の発言を私は直接聞いた事がありますが、自分の作品を正しく伝えていくために、楽譜にしばしば楽譜本体よりも長大な解説を付し、楽譜もCDもすべて自分の監修の下制作し、キュルテンの講習会でアナリーゼや演奏法の指導を行っているのです。

その努力が今後どうなるかは分かりませんが、彼の勤勉な性格のお陰で、今年初演予定の委嘱新作はすべて完成していることには改めて恐れ入ります。もっとも遅い初演予定は10月です。
初演予定はないけれども、完成している作品はざっと10作品くらいあります。

またまたバカ音楽ネタです。

ビートルズの名曲「イエローサブマリン」を金沢明子が「音頭」にしてしまいました。
映像はこちら(↓)からどうぞ。
http://youtube.com/watch?v=n-qHDAt1L7E

あらためてこの曲について考えてみると、そのまんま「音頭」にできる構成になってますね。うまい所に目をつけました。

yamasuki_main.gifアメリカ人の友人がYamasukiという怪しげな名前のアーティストの曲を聴いているのをLast.fmで発見しました。曲名も中途半端な日本語もどきで怪しさ全開。以下にアルバムのタイトルと一緒に紹介しておきます。ちなみにフランス人のユニットらしいです。

Le Monde Fabuleux Des Yamasuki
1. Yamasuki
2. Kono Sammurai
3. Yamamoto Kakpote
4. Okawa
5. AIEAOA
6. Aisere I Love You
7. Yama Yama
8. Seyu Sayonara
9. Anata Bakana
10. Fudji Yama
11. Yokomo
12. Kashi Kofima

アルバムのタイトルなどを彼に聞いてiTunesを探したら見つかったので、購入して聴いてみたら、あまりのトンデモ具合に腰を抜かしました。
歌詞の似非日本語ぶり、70年代的なファンクのリズム、腰の浮いたような女声コーラスの音色、変なおっさんのシャウトなど、見事にツボに入ってしまいました。
以下、歌詞を私が聴き取ったものをいくつか紹介します。

・Yamasuki

(おっさんソロ)
ほに ななつの かたち
いや〜〜〜〜!!!
ななつの さけびを しますから かたちを とってください
うれしい〜〜〜!!!

(女声コーラス)
たえ たえお あさめし ゆーぞ
みた まてぃこ おきゃわやか
(おっさんソロ)
こわい〜〜〜!!!
(女声コーラス)
おきゃわやかーお
あさめし ゆーぞ あさめし ゆーぞ
かわのかなー
(おっさんソロ)
あいしてる〜〜〜!!!

(中略)

だいの おとこが くらっける
ひとりめは
さ〜〜〜〜!!!
それにこたえて ふたりめは
お〜〜〜〜!!!
さ〜〜〜〜!!!
お〜〜〜〜!!!
さ〜〜〜〜!!!
(つづく)


・この さむらい

あに あに あに あの
おに あな あさび
あに あに あに あの
にきとる かわる
この さむらい
この さむらい
この さむらい
この さむらい

あに あに あに あの
おに あの かたい
あに あに あに あの
なかだし やける
この さむらい
この さむらい
この さむらい
この さむらい
(つづく)


・Yamamoto Kakpote

やまもと もと ください
やまこと ことぬける
やまもと もと ください
やまひろ ひろさわる

ほんたありますこど ほしよしとぅ
ほんたわりますからうぇ〜
どこ きむらさん ました
どこ きむらさん
もっと ました がり とろ ど〜
(つづく)


・Aisere I LOVE YOU

(女声コーラス)
あいせれ I LOVE YOU
よろこび I DO
あいせれ I LOVE YOU
ゆっくりです I DO
おだよろ しおだまり
ますにから まさいにかわ

(中略)

(女声ソロ)
あとで くる
いっと
あとで くる
いっと
この せあし
うごかなさ
(つづく)


・あなた ばかな

(忌野清志郎風ソロ) (コーラス)
あなた         あなた
ばかな         ばかな
だめな         だめな
だめな         だめな
えらぶ         だめな
げしおと        けしおと
はじめる        はじめる
はじめる        はじめる

(コーラス)
おおむかし すっかり きようと
きよとしらと ばたら ばかり
おこる むかし それは ただの
いつかの ひと ばたらの ころ
(つづく)


iTunes Storeで試聴or購入する方は以下のバナーから飛べます。

Yamasuki - Le Monde Fabuleux Des Yamasuki

以下のリンク先でも試聴できます。
http://www.moviegrooves.com/shop/lemondefabuleuxdesyamasuki.htm

シュトックハウゼンが死の直前になってようやく出版にこぎつけることのできた「モメンテ」の巨大なスコアがキュルテンより到着しました。


DSCF1923.jpg
これが到着した時の荷物の状態です。郵便局の人、重そうに持ってきました。
大きさが分かるようにCDを一緒に置いてあります。


DSCF1925.jpg
厚さが分かるようなアングルで撮ってみました。


DSCF1929.jpg
スコアは巨大且つ綴じられていないので、特製のケースに収められています。
片手で持つには少々重いです。


DSCF1930.jpg
内容物一覧です。
99枚の巨大な楽譜のページ(厚めの紙に片面印刷)と2冊の解説書が入っています。
一冊はドイツ語による原文の解説(23ページ)で、もう一冊は解説と楽譜の演奏指示の英訳(102ページ)となっていて、これを読むだけでもかなり頭脳を消耗します。


DSCF1932.jpg
実際の楽譜のページです。
大きさの実感がこれではまだ分かりにくいのですが、新聞紙1ページぶんよりも二回りほど大きい感じです。
自筆譜をスキャンしたものとコンピュータで浄書されたものが適宜ミックスされていますが、1ページ1ページ極めて丁寧に作り込まれています。

それぞれのモメントの演奏順序が可変なので、楽譜が綴じられていないのですが、それぞれのページの中でも矢印などで細かいフレーズの演奏順序が可変な記譜になっていたり、短い挿入句の楽譜のためのスロット(実際に割れ目がある訳ではありません)があったりと、極めて複雑な迷路のようになってます。

このような特殊かつ複雑な仕様だとUNIVERSALも二の足を踏むのは当然で、作曲開始から出版まで40年以上掛かったのも納得できます。
こうした大きな仕事を死の直前に成し遂げた事実に、シュトックハウゼンの執念と職人気質を感じます。

本日はイタリア文化会館へ「シルヴァーノ・ブソッティ〜ポートレートコンサート」を聴きに行きました。
私も初日に演奏に参加した、ブソッティ来日企画の最後のコンサートになります。

図形楽譜による作品を中心としたプログラムでしたが、ケージやシュトックハウゼンの綿密に考え抜かれた図形楽譜による作品と比べて、著しく自由度の高い、つまり言い換えれば、どうとでも演奏できるかなり「ゆるい」縛りになっているので、演奏者の解釈によって作品の印象が大きく左右されることになります。

イタリア人のアンサンブルによる演奏では、1台のピアノの様々な部位を3人の演奏者で様々に「愛撫」されるかのような「Per Tre」をはじめとして、入念に準備された几帳面なリアリゼーションが印象に残りましたが、私がブソッティ作品に対して感じるエロティシズムの要素が足りず、「Per Tre」に関してはどちらかというと「愛撫」というよりは「身体検査」といった趣でした。
エロティシズム云々といっても、これは私の主観ですから、ブソッティにとってはこういうのも「有り」かもしれませんが、私が演奏するのならそうはしない、という好みの問題です。

今宵のメインは最後に演奏された「Autotono」という作品で、この作品の音符のほとんどない「楽譜」は、楽譜というよりは壮大かつ緻密な落書き集(というには絵として魅力的ですが)といった感じで、絵をそのまま楽譜として演奏するという困難な作業が演奏者に課せられ、演奏者次第で傑作にも駄作にもなりうるリスクをもちます。
普通はあの絵(=楽譜)を演奏する、ということを知ったら悪い冗談だと思うでしょう。

これを桐朋学園の学生達による(数名プロの演奏家も隠れキャラのように加わっていました)室内オーケストラ+声楽アンサンブルで演奏するということで、作品自体に対する疑念も相まって全く期待していなかったのですが、これがなかなか面白い仕上がりになっていました。
巨大な絵をアンサンブルのスコアの様に見立てて(絵の上部は声楽、下のほうは弦楽パートなど)、左から右へ解釈していくのですが、弦楽セクションの同期しないリズムや不安定な音程によるサワサワしたテクスチュアなど、肉感的で豊饒な響きが様々に変化する様子は、あたかもきちんと記譜された楽譜であるかのようでした。
あとで、演奏者に楽譜を見せてもらいましたが、若干の決めごとはあるものの基本的には「絵」を演奏していたことも確認できさらにビックリしました。
この高品位な演奏結果は、指揮を務めた杉山洋一氏の優れた指導の賜物ではないかと推測します。

これで終わるかと思ったら、最後にサプライズがありました。
アンコールとして、そしてブソッティが敬愛する(笑)プッチーニの生誕150年も記念して、プッチーニの子守歌「そして小鳥さんは」(ブソッティ編曲)がなんとブソッティ自身の歌唱によって演奏されました。
職業歌手でもなんでもないので、声量もないし、時々過剰なヴィブラートがかかったりと、失笑する場面も多々ありましたし微妙に恥ずかしがっている雰囲気もなくはなかったのですが、彼が豊かな歌心を持っていることと、イタリア人らしいベル・カント的な響きのポイントをしっかり持っていることには妙に感心させられました。彼の口笛が木管楽器の音色で模倣されるアレンジも洒落ていました。

あまりに観客の反応が良かったので、同じ曲をもう一度繰り返し歌ってしまいましたが、2度目の演奏となると少し度胸がついてか、歌にも自信が出てくる様子が、カラオケの隠し芸を披露するようでもあり微笑ましかったです。
演奏とは技術ではなく心が最も重要なんだな、と痛感させられもしましたが、このヘタウマな演奏、CDになったら私は絶対に買います!

演奏会の前には講演会も行われていましたが、相変わらず「迷宮入り」の展開になっていたようで聞きのがしたのが残念です。

話は変わりますが、帰宅するとシュトックハウゼン「モメンテ」の巨大なスコアが届いてました。この話はまた後日。

overview_bigair_two20080115.png

薄い、薄過ぎですね。。。

アップルがこんな薄いノートを出すわけがないと思っていたので、エアギターとか、そういう冗談かと思っていたら本当でした。
これはかなり萌えます。

突然のシュトックハウゼンの逝去でどうなるか危ぶまれていた今年のシュトックハウゼン講習会は、「特別仕様」で行われることになりました。
詳細は以下のリンク(パンフレットのPDFへのリンクもあります)をご覧下さい。

http://www.stockhausen.org/stockhausen_courses.html

通常は一週間強に渡って行われていた本講習会は、今年は1週間延長し、「サウンド・プロジェクション」のためのコースがそこで行われます。

講師は、長年シュトックハウゼンのミキシング・ボードの傍らでアシスタントを務めていたBryan Wolfや、同じくエンジニアとして働いてきたIgor Kavulek(彼は2005年の来日公演にも同行しています)が務め、シュトックハウゼン作品に求められる、スピーカーなどの機材の設定、マイクの立て方やバランスの取り方などの講習が行われるようです。
パンフレットにも引用されているシュトックハウゼンの言葉によると、サウンド・プロジェクションは「指揮者よりも重要」で、その技術を「ピアニストのように練習しなくてはならない」重要な役割を持っていて、シュトックハウゼンがこの分野での後継者を求めている、と発言していたのは私も何度も直接聞いています。
そして、実際に、そうした側面をきちんと考慮しないと作品の面白さが聴衆にきちんと伝わらないことも様々な演奏を通じて痛感もしています。

そして、その期間のコンサートは毎晩ひたすら電子音楽が上演されます。
「習作I、II」「少年の歌」「コンタクテ」「テレムジーク」「ヒュムネン」「見えない合唱」「オクトフォニー」「金曜日の電子音楽」「水曜日の迎え」「水曜日の別れ」「宇宙の脈動」などといった初期から晩年までのほとんどすべての電子音楽が網羅されている濃密な内容になっています。

その後の一週間は毎年の内容とほぼ同じ内容ですが、声楽クラスの講師は、しばらく毎年来ていたテノールのフーベルト・マイヤーに代わり、バスのニコラス・イシャーウッドが久々に復活しています。

コンサートでは「KLANG10時間目:輝き」(ファゴット、ヴィオラ、クラリネット、トランペット、トロンボーン、オーボエ、テューバのために)のドイツ初演、「KLANG13時間目:宇宙の脈動」の再演、「KLANG3時間目:自然な持続時間」の24曲全曲演奏などが目を引きます。「カレ」の4チャンネルによるプロジェクションや、カティンカ、スージーの「ドリーム・チーム」で「アヴェ」の至福な演奏をまた聴けるのも楽しみです。

シュトックハウゼン自身によって行われていたコンポジション・セミナーは当然不可能なのですが、彼のアシスタントを務めていたこともあり、この講習会でもアナリーゼのレクチャーをやっていたRichard Toopが行うことになり、「モメンテ」「天国の扉」「宇宙の脈動」のアナリーゼを行うそうです。
加えて「宇宙の脈動」の極めて複雑なミキシングの補佐を行ったフライブルクのスタジオのスタッフによるレクチャーも行われるそうです。

驚くべきは、受講料の価格設定です。2週間参加しても、通常の1週間の受講料と同じ360ユーロです。当然滞在費も余分にかかりますが、それでもかなりお得な価格だと思います。

ちなみに、パンフレットのシュトックハウゼンの写真は背景を消しているだけですが、天国のミキシング・ボードに座っているかのように見えます。

毎年、受講生全員からのシュトックハウゼンへのプレゼント(寄せ書きなど)、という企画がありましたが、今年からはそうしたものも無くなるのですね。ちょっと悲しいです。

とある筋からベームのモーツァルト交響曲全集がiTunes Storeで1500円で買えると知り、アクセスしてみてあまりの安さにビックリしていると、そのリンクからケンプやバレンボイムのベートーヴェン、ピアノ・ソナタ全曲も1500円で購入できることも分かったので、以下にリンクを張っておきます。

ベーム、モーツァルト交響曲全集

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ケンプ、ベートーヴェンピアノ・ソナタ全曲

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バレンボイム、ベートーヴェンピアノ・ソナタ全曲

ついでに以前から知っていた1500円お買い得セットも紹介しておきます。
なんといってもアーノンクールのベートーヴェンてんこ盛りセットが演奏も含めてお薦めです。

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カラヤン、ブルックナー交響曲全集

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アバド、マーラー交響曲全集

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アーノンクール、ベートーヴェン交響曲全集+序曲集+ヴァイオリン協奏曲+プロメテウスの創造物+荘厳ミサetc.

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最近、こちらのサイト(↓)を見て目覚まし時計を使わずに起きる練習をしています。

ほぼ日刊イトイ新聞 - ねむりと記憶。池谷裕二+糸井重里

もちろん大事な仕事に寝過ごしてしまうとまずいので保険として一応目覚まし時計をセットしますが、かなりの高確率でセットした時間の少し前に自然に目が覚めるようになりました。

我が家の寝室にはかなり秒針の音のうるさい時計がありますが、このように目覚める習慣を付けてから驚くべき現象を体験するようになりました。

目が覚める瞬間にこの秒針の音が無音からクレッシェンドして聴こえるのです!
その感覚はさながらステレオのヴォリューム操作をしているか如くです。
そのクレッシェンドと同時に身の回りのかすかな音がクレッシェンドするのも分かります。

その逆に、寝つく瞬間にこの秒針の音がフェード・アウトしていくのを聴いてみたいと思っていますが、この試みは必ず失敗します。

今月末に演奏する新作の楽譜がまだ到着していません。
まだ、3週間あるし(汗)、それほど突飛な要求だらけの楽譜ではない感触があるので、それは良いのですが、3月に初演するモノ・オペラの楽譜がまだ届かないのには、不安が隠せません。

楽譜見ても良いのであれば、当日のゲネプロでようやく全曲の楽譜がそろうということも何度か体験している(川○氏とか、中○氏とか。。)ので怖くないのですが(汗)、オペラだと暗譜して演技もしなくてはならない訳で、2ヶ月前になっても1小節も届いていないのはかなり不安です(台本は完成済)。
当初の締切は11月末で、12月中旬に主催者の某団体から分厚い封筒が届いて、「楽譜が来た!」と思ったら、チラシがどっさり入っているだけでした(泣)。

作曲家の方々、至急頼みます(大泣)。

そういう訳で、2月は地獄の日々ですな。。

実はその前にもいくつかありますので、告知しておきます。
まず今週10日は以前よりお知らせしているブソッティの声楽作品のコンサート。
ブソッティ自身による講演がある関係で、演奏時間は短いのですが、演奏もまとまってきて感じるのは、今回演奏される作品はかなりの秀作であるということです。限りなく演奏不可能に近い作品ですが、そこに込められた美しさ、官能性は絶品です。

その後、テューバの橋本晋哉氏の以下のリサイタルにゲスト参加します。

On Site Labo Emerging Artist Support Program Music
21世紀を担う新鋭たちの響き「テューバは語る」

1月26日(土)19:00開演 トーキョーワンダーサイト本郷 ¥3,000

<出演>橋本晋哉 tuba、甲斐史子 vn/vla、松平敬 bar、藤田朗子 pf

川島素晴:3つの習作「バス課題/ソプラノ課題/学習追走曲」(2006)
マウリシオ・カーゲル:ミルム (1965)
ガース・ノックス:次の潮汐と共に… (1990)
山根明季子:委嘱作品 (2008)
ジャック・ルボチエ:どうして俺のことをもう愛していないの? (1989)
湯浅譲二:天気予報所見 (1983)
ヴィンコ・グロボカール:ジュリリチューバイオカ (1996)
即興演奏

リンク:公式サイト

私が演奏するのは湯浅譲二「天気予報所見」1曲のみですが、この作品も含め橋本氏が折に触れて演奏を重ねている作品が満載ですので、お楽しみ頂けること間違いなしだと思います。
ちなみに私が「天気予報〜」を演奏するのはもう10回近くになります。バリトン・パートに関しては、少なくとも日本最多演奏記録を保持しているのではと思われます。

皆さまのお越しをお待ちしております。

PS シュトックハウゼンCDガイド、さらに5枚ほど追加しています。

手入れが滞っていた「シュトックハウゼンCDガイド」を久々に更新しました。
10番台のCDを中心に簡単な解説をつけました。
それ以外のものにも細かく関連CDの情報を加えていたりしてます。

URLはこちらです。
http://matsudaira-takashi.jp/kstcd/

あけましておめでとうございます。
さて、お正月らしい話題から。

昨日のエントリーでも紹介したレゲエ風「お正月」ですが、どんな曲でもレゲエのリズムを乗せれば様になる訳ではないのです。そういう意味でも「お正月」とレゲエがピッタリと合うのは奇跡的といっても良いと思います。

一応もう一度、恥ずかしくて自分で失笑してしまう録音のリンクを張っておきます。
http://matsudaira-takashi.jp/sounds/oshogatsu.mp3

その原因を考えてみると、お正月のフレーズ構造、リズム構造に秘密がありそうだということが分かりました。
まず、レゲエのリズムにフィットするためには、あの刻みのリズムとコントラストを成す周期のフレーズが必要で、簡単に言うとフレーズのあまりに短い曲はこのリズムに合いません。
かといって、フレーズ構造が単純すぎてもつまらないので、時折フレーズが伸び縮みすることによる変化も重要です。

それで、この「お正月」ですが、童謡で典型的な同じリズム、フレーズの繰り返しに留まらない工夫が感じられます。

まず初めの「もういくつねると お正月」のリズム構造は8分音符を単位とすると4-2-1-1-2-2-4-2-2-2-2-6となっていて4小節のフレーズを作ります。4分の4拍子で4小節というのは童謡というジャンルではかなり長い部類に入ります。そして前半2小節の4-2-1-1-2-2-4(もういくつねると)というリズム構造はほぼシンメトリーになっていて、その結果として出てくる音価の収縮、拡大の変化が、続くフレーズの4分音符の繰り返し(お正月)と対比を形作ります。この部分だけでもレゲエのリズムに合う要素を持っているのですが、さらにその次のフレーズがレゲエ的に「おいしい」構造になっています。

次の「お正月には凧上げて」のリズム構造は1-1-1-1-1-1-2-1-1-1-1-2となりフレーズは2小節に縮まります。4分音符が支配的だった初めのフレーズに比べて、ここではその半分の音価の8分音符が支配的となり、フレーズも4小節から2小節へ半減します。つまり、やや大袈裟に言えばフレーズごとテープの早回しのように圧縮された、ということになります。さらに、8分音符で喋るようなメロディーのパターンはレゲエでもよく見られるもので相性は抜群です。

そしてこの2小節のフレーズとほぼ同じ構造がもう一度繰り返され、最後に初めの4小節フレーズが戻ってくることによって、A4-B2-B2-A4(数字は小節数)という全体の構成が完成されます。
ちなみに、本題からそれますが、A-B-B-Aという構成はちょっと珍しいと思います。A-A-B-AとかA-A-B-Cといった「起承転結」的な構成が一般的だからです。

そして、メロディー構造ですが、多くの童謡と同様、ペンタトニックで出来ていて、これもレゲエの音楽性とぴったりです。
ついでにメロディーのラインも分析してみると、初めと最後のフレーズはほぼ同一のメロディーで、主音から第5音に上行し再び主音に戻ってくる構造、真ん中の2つのフレーズは、どちらも、下行→上行というラインを描きますが、2つ合わせて主音から第5音へ下行しオクターヴ上の第5音へ上行していくラインを描き、両側のフレーズの山型のメロディー・ラインとうまくコントラストを作っています。

ちなみに和声進行は原曲のままではレゲエのリズムにうまく合わないので、録音に際して若干のリハモナイズをしています。
後で気が付いたのですが、ベース・パートはかなり低い音域の倍音の少ない音色を使っているため、パソコンの小さなスピーカーではそのパートは再生できないかもしれません。我が家のPowerBookの内蔵スピーカーではベース・パートを削ったリミックスのように聞こえました。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
HMV ONLINE
TOWER RECORDS ONLINE
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