シュトックハウゼンが死の直前になってようやく出版にこぎつけることのできた「モメンテ」の巨大なスコアがキュルテンより到着しました。

これが到着した時の荷物の状態です。郵便局の人、重そうに持ってきました。
大きさが分かるようにCDを一緒に置いてあります。

厚さが分かるようなアングルで撮ってみました。

スコアは巨大且つ綴じられていないので、特製のケースに収められています。
片手で持つには少々重いです。

内容物一覧です。
99枚の巨大な楽譜のページ(厚めの紙に片面印刷)と2冊の解説書が入っています。
一冊はドイツ語による原文の解説(23ページ)で、もう一冊は解説と楽譜の演奏指示の英訳(102ページ)となっていて、これを読むだけでもかなり頭脳を消耗します。

実際の楽譜のページです。
大きさの実感がこれではまだ分かりにくいのですが、新聞紙1ページぶんよりも二回りほど大きい感じです。
自筆譜をスキャンしたものとコンピュータで浄書されたものが適宜ミックスされていますが、1ページ1ページ極めて丁寧に作り込まれています。
それぞれのモメントの演奏順序が可変なので、楽譜が綴じられていないのですが、それぞれのページの中でも矢印などで細かいフレーズの演奏順序が可変な記譜になっていたり、短い挿入句の楽譜のためのスロット(実際に割れ目がある訳ではありません)があったりと、極めて複雑な迷路のようになってます。
このような特殊かつ複雑な仕様だとUNIVERSALも二の足を踏むのは当然で、作曲開始から出版まで40年以上掛かったのも納得できます。
こうした大きな仕事を死の直前に成し遂げた事実に、シュトックハウゼンの執念と職人気質を感じます。


さすがに大きいですね.
最近BBC交響楽団の50年史の本(ニコラス・ケイヨン著)を入手したのですが、'70年代に「ブーレーズと(BBC Radio3の責任者だった)W.グロックは《モメンテ》を大変演奏したかったが、困難さのために自主上演を諦め、シュトックハウゼンらによるready-madeの演奏を招聘した(その演奏会は大変な成功を収めた)」という趣旨のことが書いてありました.
これを意のままに浄書する楽譜作成ソフトが世に出回るのは何十年先になるのやら、というのは伝わります。
kasumoererさん>
大変なのはこのスコア自体では演奏できないことです。
モメントの配置や挿入句の選択をし、且ついくつかのアレアトリックな部分の確定も行って、演奏用の楽譜を作成しなくてはならないのです。
ただし、すべての楽譜のデータをコンピュータに保存しているので、ヴァージョンを確定した段階で出版社に連絡すると、演奏用の楽譜を作成してくれるそうです。
M.F.さん>
スコアをざっと見ただけですが、あまりにも沢山の音楽的アイデアが詰まっているためにどうやってリハーサルを進めるのかは、曲が完全に頭に入っていないと不可能かと思われます。
ご紹介の書籍で記述されている演奏は、全曲完成後にヨーロッパ中をツアーした時の話だと思います(したがってこの時のヴァージョンは「ヨーロッパ版」と呼ばれて、この版はCD化もされています)。
このスコアはユニヴァーサルのカタログにあって昔Stuttgartの音楽大学で見たような気がするけど気のせいかな?でも出版されていたと思いました。あった、UE 13816。あの辺でまあ重要なのはNr.12のコンタクテでしょう。これはラッヘンマンが散々アナリーゼで取り上げました。写譜もさせられましたね。Nr.11の「レフラン」は細野さんがStuttgartの音大の入学試験で出たとか?誰の曲?どうしてそう思いますか?と簡単な質問だったようです。良く現代音楽の本に譜例として載っていますね。Nr.14の+-はラッヘンマンの弟子のコルネリウス・シュヴェアーがフライブルクから普通の演奏譜に直したのを持ってきて講義したなあ。
これ以降の中期はStockhausenに講習で直接習ったことが多いですね。FrankufurtやDarmstadtかな?
後期はStockhausenの新作初演コンサートでトーク・コンサートの形や晩年の講義でしかほとんど知らないですね。音大では誰も取り上げないです。従がって試験にも出ない。
Stockhausen研究は今始まったばかりですね。
「モメンテ」はUNIVERSALのカタログ上にはあったはずですが実際には(少なくとも全曲完成版では)出版されていません。
「TEXTE I」にはほんの少しだけその譜例がのっていて、この作品のためのスケッチ集は出版されています。
「コンタクテ」や「習作II」と同様、出版権をシュトックハウゼン出版が引き取ってそこから本人の納得いく形で出版しています。
「コンタクテ」も新しい版が出版予定です。
そういえば「習作I」は見たことがないですね。でもどっかで見た記憶がある気もします。夢かな?
それはそうと今年のウイーン芸術週間もStockhausenのオペラからMichels Reiseだそうです。要は「木曜日」の第二幕だけのようです。こういうやり方もあるのですね。でも作曲者がいつものようにNein, Neinといって反対しそうな上演です。でも最近の傾向として作曲者が死んだらみな自由勝手にやってますね。
「習作I」は出版されていません。CDのブックレットで自筆譜の一部を見ることはできます。
MICHAELs REISEに限らずLICHTのそれぞれの場面、幕は独立して演奏できる旨楽譜に「必ず」記載されていますし、現実的な事情から、むしろそうしたスタイルでの上演の方が多いです。
MICHAELs REISEはツアー用に小編成にアレンジした版もECMからシュトックハウゼン監修による録音がでていますよね。
「習作I」のスコアの一部はTEXTEの第2巻にもありますね。要はCDと同じ文章なのですけど。
もうただただ尊敬!!!真っ白の紙からこんなに書くのですから。
ところで、いつコンタクテの新版でるのでしょう。。。?
まあカティンカに聞けば良いのでしょうが。。。
ちなみに「コンタクテ」の新版とは演奏用のスコアではなく電子音楽のリアリゼーション・スコアのことです。
最新のカタログには「A new edition is being prepared at the moment」と記載されています。
あらためて1998年版のこれを聴くと、まずすごいのはソプラノソロ!アロヨとデヴィのいいとこを全部継承してる。時代が進化したというべきですね。
ただ、全体に「綺麗で軽い」んですよ。合唱はまとまってはいるが、ここのメンバーの声に個性はない。ヨーロッパ版がプログレロックに似て重厚なのは、KSTにとってはミスジャッジだったのでしょう。
でも、ちょっとまだ物足りない気がします。
Kasumoererさん>
1998年版のソプラノ・ソロを歌っているAngela Tunstallは「金曜日」のエーファ役でも好演していますね。
>全体に「綺麗で軽い」
「軽い」のはおいておくとして、「きれい」というのはシュトックハウゼンの過小評価されているポイントです。LICHTやKLANGはもちろん、初期の「グルッペン」「プンクテ」「コンタクテ」「ピアノ曲」も新録音や実演を聞くと「美しい」というのが大きく印象に残ります。
旧録音で「美しい」印象が必ずしも強くないのは録音の解像度が低いからです。「モメンテ」のヨーロッパ版は当時としては最先端の録音ですがは1998年版と比べると細部まで捉え切れているとはとても言えません。
それでも、彼にとっては古いヨーロッパ版の演奏が「基準」のようです。1998年版の演奏のCDにはシュトックハウゼン自身が録音に「関わっていない」ということが強調され記載されています。これは、自分が関わればもっと良い録音、ミックスをできる、ということの裏返しです。あと、スコアにも1998年版では電子オルガンの(ハモンド・オルガン)のパートをシンセサイザーで代用しているが、この代用を推奨するものではない、ということも書かれています。
1998年版を聴いてヨーロッパ版に立ち返ると新しい発見もありますし、スコアも参照した上で色々と聴き比べてみたいと思います。
>録音の解像度
そうですね。トラックごとにマージンが異なるのが変だと思っていました。多分、はいりきらないのかな
>演奏が「基準」
その見解はCDリリース当時「1995年」でした。1998年ヴァージョンはそのあとになりますから、新版を演奏する際にもう一度音楽観を確認した痕跡がありますね。refrain2000もその路線ですね。
kasumoererさん>
3xREFRAIN 2000やSTOP und START、MIXTUR 2003のような不確定な作品を固定された版に書き換えたものとはコンセプトが違います。
MOMENTEの1998年版はあくまでもMOMENTEの一つの演奏可能性というスタンスです。
その証拠がスコアの出版方法です。
オリジナルのスコアと、ヨーロッパ版のみが出版されています。
ちなみに今年の11月にリスボンで演奏されるのもヨーロッパ版ですね。
>演奏可能性というスタンス
なるほど。了解いたしました。