2008年3月アーカイブ

 intercommunication0804.jpg「インターコミュニケーション」64号(画像をクリックするとamazonに飛びます)に「セリー・フォルメル・メディア〜シュトックハウゼンの《ヘリコプター弦楽四重奏曲》」というタイトルの清水穣氏の記事が掲載されていますので紹介します。譜例や注釈も含めて6ページの分量になります。

清水氏は、冒頭「ヘリカル」(私は勝手にこう略しています)が「スペクタクル的な上演形態で知られている」と書き出したものの、そのすぐ後の部分で2007年の上演を例に挙げ、「スペクタクルと言っても田舎町の文化予算の一部で実現可能な程度に過ぎない」といきなり変化球を投げかけ、初演者であるアルディッティ弦楽四重奏団と作曲者とのやりとりの内容を吟味した上で、最終的には、この作品の「本質はスペクタクルにあるのではない」と結論づけるなかなか凝った構成になっています。それではどこに本質があるのかは実際の記事をお読み下さい。

私自身アナリーゼも試みたこの作品のコンセプトの「肝」を知っている私にとっては、あまりにも当然すぎる結論で頷くしかないのですが、ヘリコプターを4台使うとお金が莫大にかかるなどの「スペクタクル」な面ばかりが述べられている現状を考えると、目から鱗の読者も多いかもしれません。あの「アイ〜ンス」「ツヴァ〜〜イ」という叫び声の由来についてもご丁寧な注が付いています。

シュトックハウゼンの作曲技法を語る上で外せない、セリーやフォルメルについても詳細な解説がありますが(《光》のSuperformel全体を収めた譜例もあります)、フォルメルはおろかトータル・セリアリスムの意義も未だに表層的にしか理解されていない現在の状況を考えると非常に有益なものと言えるでしょう。
トータル・セリアリスムとは、12音技法におけるピッチの操作を音高や強度にも応用したもの、という以上の意義を見いだせない人はこの文章を読むべきだと思います。

もっともこの短い文章を読んだからといってトータル・セリアリスムの詳細や、Superformelが具体的にどのように作曲に使われているのか、などが理解できるようになるものではないのですが、単なる作曲法や表面的なアナリーゼに留まらない深い理解へ達するには、ここに書かれているような内容が最低限理解できていなくてはならないのです。

この様な話をキュルテンの講習会の空き時間など折りに触れて清水氏から直接伺ったことを思い出します。

作曲家の安野太郎さんが、現在のチベット情勢を憂い、音楽を通じてチベットの平和のための輪を広げようとする試みを行っていますので、紹介します。

詳しくは以下の安野氏のブログ記事をお読み下さい。
皆様へフリーチベットプロジェクトのお誘い

簡単に要約すると、チベットの少女が歌っている短いメロディーを皆で録音し、それをミックスすることで、大きな歌声の輪を広げていこうということです。
この企画に参加した始めの10人の方の演奏をミックスしたものはこんな感じになります。
10人ミックス(mp3)

私もリンを伴奏に歌った録音を送りました。
http://db2.voiceblog.jp/data/p2p-ftp/1206509604.mp3

現在17人分の録音が集まっているようですが、もっと沢山の人に参加してもらえるとすばらしいと思い、こちらでも紹介してみました。
上記の安野氏のサイトにはそのメロディーの楽譜、音源、クリックなどがありますので、テンポだけ合わせてそのメロディーを歌ったり演奏したりして録音した音声ファイルを送るだけで参加できますので、興味のある方はどうぞ。

kundun_sound.jpgkundun.jpgこの映画はダライ・ラマ14世の半生を描いたものです。
彼の幼少時代にはじまり、即位、中国軍の侵攻、毛沢東との対話、そしてインドへの亡命に至る彼の半生が美しい色彩を伴った映像で描かれています。今チベットで起こっている事の原因の一端を知るのにも役に立ちますが、映像を通してチベットの宗教や文化に触れることで、チベットの素晴らしさを少しでも多くの人に知ってもらえればと思います。

音楽はフィリップ・グラス。彼お得意のアルペッジョを多用したオーケストラの音楽と、重低音の歌声によるチベットの声明などの伝統音楽を巧みに融合したサウンド・トラック(左の画像をクリック)で、濫作気味の彼の映画音楽の中ではそれなりに楽しめる内容になっています。

寺院の中で走り回るネズミにも愛情の眼差しを注ぐ彼のひととなりが描かれるかと思えば、毛沢東に面と向かって「宗教は毒だ」と言われるなど彼の心の苦しみが伺われる場面もあり、チベットの現状を思いながらこの映画を観ると何ともいえない苦しい気分になってきます。

単なる伝記映画に終わらない充実した内容なのですが、残念なのがDVD(右の画像をクリック)がどうも廃盤らしくamazon.co.jpではとてつもない値段のついた中古品があるのみとなっています。

参考リンク:ダライ・ラマ法王日本代表部事務所

前回の記事とは逆に新作初演のネタです。

先日お知らせした、今週土曜日の日本現代音楽協会の「オペラ・プロジェクト II」に関して書いたちょっとした文章が主催者のサイトに掲載されていますので、紹介しておきます。

>>日本現代音楽協会

このリンク先を下の方や同サイト内の広報部雑記のページで、本企画の練習風景を収めた写真や作品紹介を見ることができます。

作詞、作曲者の著作権は死後50年、その演奏に関わる著作隣接権は発行後50年で切れますが、そのどちらも消失したパブリック・ドメインのクラシック音楽の録音を集めたサイトが以下のURLにあります。
Public Domain classic

左に作曲者の名前が並んでいて、そこをクリックするとその作品の一覧、それをさらにクリックするとその作品の様々な演奏を収めたmp3に辿り着けます。

例えばベートーヴェンの交響曲第5番だとこのような感じです。
http://public-domain-archive.com/classic/composition.php?album_no=12

古くは1913年のニキシュの演奏から、ワインガルトナー、フルトヴェングラー、トスカニーニ、若き日のカラヤンまで様々な演奏を無料で聴き比べることが出来ますし、普通にダウンロードも出来ます。
古の巨匠の演奏を味わうのもいいですし、以下のような小品をノスタルジックに楽しむのも味わい深いです。

エルガー「愛の挨拶」(1913年録音)
サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」(1904年の自作自演もあり)

ラフマニノフやガーシュインの自作自演もありますし、プッチーニのオペラ全曲が聴けたりもします
プッチーニ「トスカ」(テバルディ、カラス)


そして、このような古の音源を楽しむのに最適な、レトロプレイヤーというナイスすぎるソフトがあります。

レトロプレイヤー(Mac OS XまたはOS9)

retroPlayer.jpg

mp3などの音声ファイルをプレイヤーの画面にドラッグするだけで再生できますが、レコード盤が回ったり、針の雑音が加わったり、音程が微妙に揺らいだり、果てには針飛びが起きたり(これらの程度は設定可能です)と細部までの拘りに胸キュンになってしまいます。

コンサートのお知らせです。
仙台にお住まいの作曲家、門脇治さんの新作モノ・オペラ「ボルヘスの時間」を以下のコンサートで演奏します。

■オペラ・プロジェクトⅡ 〜モノ・オペラ二題〜
2008.3.15.(土) 18:00開演 東京文化会館小ホール
入場料:3500円

門脇 治/ボルヘスの時間
・松平 敬(バリトン)

三枝木宏行/赤ずきん
・新藤昌子(ソプラノ)

指揮:松尾祐孝
演出:飯塚励生
演奏:田中隆英(fl) 有馬理絵(cl)
桑田 穣(vln) 高田剛志(vlc) 藤田朗子(pf)

演奏会の詳細、チケットご購入方法などは主催者の日本現代音楽協会のHPをご覧下さい。
私の方でもチケット申込を受け付けておりますのでこちらのフォームよりご連絡下さい。

テンポやリズムの変化が複雑なこの作品を、短期間、かつ極めて限られた稽古回数で暗譜し、仕上げなければならないスリリングな状況+確定申告などの雑務に追われ、このブログの更新も滞っていましたが、ようやく多少の余裕が出てきました。
主人公が本を読んでいると、その本の中から「自分自身」の声が聞こえてくるという心理劇風のストーリーですが、その声のパートも事前に録音をしておかなくてはならず、余計に大変だったのです。

タイトルのボルヘスとは主人公の飼っている犬の名前ですが、その由来はアルゼンチン生れの同名の作家からきています。
ホルヘ・ルイス・ボルヘス

ちなみに、もう一つの演目である三枝木さんの作品(私は出演しません)は門脇さんの作品とは全く異なるスタイルで作曲されていますが、midiによるデモ・テープの歌唱声部はなんと初音ミクで作られていました!

沢山の皆さんのご来場をお待ちしております。

アーカイブ

OpenID対応しています OpenIDについて
Powered by Movable Type 4.26

2012年2月

Sun   Mon   Tue   Wed   Thu   Fri   Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      

このアーカイブについて

このページには、2008年3月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2008年2月です。

次のアーカイブは2008年4月です。

おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
HMV ONLINE
TOWER RECORDS ONLINE
amazon.co.jp
iTunes

サイト内リンク