ケルンで行われた、シュトックハウゼンの遺作、KLANG7時間目「バランス」の世界初演がたった今終わりました。
WDRで生放送をやっていたのを聴きましたが、現地時間でのこの曲の演奏開始時間は23時15分、日本では大晦日以外あり得ない設定です。そのお陰で日本時間でもちょっと早起きすればライヴで聴ける時間になったのでラッキーでした。
KLANGの6時間目〜12時間目はどれも5時間目「ハーモニー」の素材をもとに作曲された三重奏曲です(10時間目「GLANZ」のみ変則的に4楽器の加わった7人の奏者を必要とします)。
従って7月に初演された10時間目「GLANZ」を聴けばこの新作の雰囲気も大まかに想像が付いたのですが、兄弟のように似た曲同士でもその響きは全く異なります。
「GLANZ」の中核となる三重奏はファゴット、ヴィオラ、クラリネットですが、「バランス」はバス・クラリネット、イングリッシュ・ホルン、フルートの三重奏、「GLANZ」のタイトルの通りの輝かしい雰囲気に比べてこちらはより落ち着いた渋い色彩の響きでした。
当然バスクラやイングリッシュ・ホルンという楽器の選択にこの音色感が大きく影響しているのですが、そこにフルートの高音が加わることで、文字通り響きに「バランス」が保たれるように考えられています。
私が耳で聞いた限りでは、「GLANZ」は5時間目「ハーモニー」の構造を順になぞりながら作曲されていたようですが、「バランス」ではこの構造を逆行するように作曲されている模様です。
「GLANZ」では作品のはじめに演奏者が「Gloria in excelsis Deo」というラテン語のテキストをしゃべるイベントがありましたが、「バランス」では作品の最後にこのイベントが来て、その後全員が同時に「ハーモニー」アルペッジョを演奏しながらディミヌエンドで終わり、という構造になっています。
作品の中盤あたりで様々な組み合わせの二重奏による部分があったのもこの作品の大きなポイントでしょう。
「ハーモニー」でのゆったりした旋律断片、それを圧縮した疑似ハーモニー風のアルペッジョを様々に組み合わせるのは「GLANZ」と全く同じです。
同じ素材を使って何曲も作曲すると、だんだん焼き直し感が強くなってくるものですが、もとの素材自体がよく考えて作曲されているので、いろいろ聴くことによって逆に作品の構造をより深く聴取できるのが面白いです。


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