2008年11月アーカイブ

廣瀬量平氏の名前を知ったのは中学生の頃、いくつかの合唱曲を歌った時です。

数年前ある男声合唱団から、廣瀬氏の合唱曲の代表作でもある「海の詩」の男声合唱版(原曲は混声合唱)の編曲を依頼され、作曲者ご本人より、私のアレンジに対して(間接的にですが)お褒めの言葉を頂き、うれしく思った事を思い出します。
特に混声合唱でポリフォニックに絡み合う部分を男声合唱に圧縮するのは非常に苦労しました。

心よりお悔やみ申し上げます。

さて、話は変わりますが、明日は東大でシュトックハウゼン三昧です。
「シュピラール」についてのワークショップを行った後、コンサートで「ルシファーの夢」「7つの日の歌」「シュピラール」の3曲を演奏しますが、何れも再演ばかりなのに、三曲並べると非常にプレッシャーが高く軽くビビってます。
うまくいきますように。

本日のシンポジウムもご来場ありがとうございました。パネラーであることを忘れ、清水氏の話に「へ〜」となることしばしばでした。

先日放送音源を紹介したKLANG19時間目URANTIAの楽譜の一部が、以下のサイトより閲覧する事ができます。

http://www.southbankcentre.co.uk/minisite/stockhausen/gallery
いくつかの画像がスライドショーのようにでてきますが、その一番最後にあります。
カラフルに色分けされ、カティンカへの献辞も入った、シュトックハウゼンらしいイラストです。

あの複雑な電子音楽と生演奏をどうやって同期しているのかが不思議でしたが、単純に時間で管理している事が分かり納得です。
ピッチ構造は細かい逸脱が随所にあるものの、KLANGの24音セリーを繰り返すシンプルなものです。


13時間目COSMIC PULSESのform scheme、「少年の歌」のリアリゼーション・スコアなども良いですが、これらは何らかの形で出版されています。しかし、5時間目HARMONIENのスケッチはとても貴重です。楽譜とこのスケッチでかなりの部分までアナリーゼ可能なので、興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょう?

今月の上旬、ロンドンでシュトックハウゼン作品を集めた大規模な企画がありましたが、その一部がBBCによって放送されました。

曲目は、最初期の「アルトのための3つの歌曲」、遺作となったKLANG19時間目「URANTIA」(世界初演)、そして亡くなる前の晩まで作曲していた「ティアクライス」のオーケストラ版(イギリス初演、演奏はオリヴァー・ナッセン指揮ロンドン・シンフォニエッタ)という貴重なものです。

あと6日間の限定公開ですが、この放送音源がBBCの以下のサイトから聴く事ができます。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00fgztn

URANTIAは13時間目「COSMIC PUSLSES 宇宙の脈動」の24層の電子音楽から3層を抜きだしミックスし直した電子音楽に合わせてソプラノ独唱が歌う作品です。歌うのはなんとカティンカですが、さすがに本職の歌手ではないので予め録音した音源を電子音楽と一緒に再生する方法での上演となっています。

到底全ての音を聴き取る事ができないほど極度に複雑な「COSMIC PULSES」から3層分だけ抜き出した電子音楽、どのように響くのか興味津々でしたが、たった3層だけでも予想を超えた複雑さでびっくりしました。インターネットのストリーム放送のため音質はかなり悪いので、きちんとした音で聴いてみたいものです。

そこにソプラノの息の長いメロディーが絡みつくのですが、カティンカのヴィブラートをかけない歌い方が、現世を超越したような印象を醸し出していています。宇宙空間に天使が漂いながら歌っている雰囲気と言えばいいのでしょうか。「シリウス」から派生したソロと電子音楽の版(「アリエス」「カプリコーン」「リブラ」)に音響の組み合わせは似ている面もありますが、そこで見られたある種の「明るさ」はここには感じられず、虚無感、孤独感といった暗い雰囲気が全体を覆っているように感じました。

「ティアクライス」のオーケストラ版は正確には2つの作品の合成となります。2004年に作曲した「5つの星座」(乙女座〜山羊座、出版楽譜あり)と死の直前の2007年に作曲した「続・5つの星座」(水瓶座〜双子座)から成り、この順序で演奏され、双子座に続く、蟹座と獅子座は作曲されていません。
亡くなる日の前の晩に「双子座」を完成させたことは以前にもお知らせしたかと思います。

まず始めに作曲された「5つの星座」では、シンプルな美しさが全曲を支配しています。1管編成のごく小さな編成で音色旋律を多用したオーケストレーションはヴェーベルンを想起させ、マーラー的なセンチメンタリズムすら透けて見えますが、奇異な音色を使う事なく、これまで聴いた事のない不可思議な美しさを生み出す職人技はさすがだと思います。コントラバスを欠いた編成によって生じる浮遊感も絶品です。
メロディーの変形のさせ方のいくつかは、前年に作曲したテノールとシンセ版で使用したアイデアを流用しています。

「続・5つの星座」では一変して、原曲のシンプルさからは想像のつかない複雑さが支配しています。各メロディーを3〜4回繰り返す(内一回はオリジナルのテンポによる原形の旋律の演奏)というルールはほとんど無視され、「シリウス」の時のように「旋律全体」が音響素材として扱われています。ここで多用されている手法が、単一のメロディーを様々なテンポ、音域で同時に多層的に演奏するものです。「魚座」では全体がこの方法のみで構成されています。原曲では2匹の魚が泳いでいるかのような2声のメロディーが、ここではさまざまなサイズの魚の大群になっています。「COSMIC PULSES」で使用された、様々なテンポによるメロディーのループを重ねる手法をオーケストラに応用したものと思われます。

「牡羊座」での、メロディーを様々な特性を持つ音響の連なりとして解釈し直した、斬新でスリリングなヴァリエーションも楽しいですが、さらなる楽しみは続く「牡牛座」に表れます。
歩き回りながら演奏する(実演を見ていないの推測ですが)テューバ奏者の幅広い音域を駆使した超絶的なパッセージが全編を支配していますが、そこに加わるオーケストラの躍動感あふれる音響も含め、死を目前に控えた人間が作曲したとは思えない生命力が感じられます。
KLANG10時間目「GLANZ」でも突如テューバ奏者がステージ上に表れ横切っていくシーンもユーモラスでしたし、「祈り」の静的な音響の中でも、テューバ・ソロによる躍動的なパッセージはどこか場違いで、それ故インパクトに残る場所がありますが、シュトックハウゼンのテューバという楽器に対する見方が垣間見えます。
「牡牛座」の最後ではテューバ奏者の「おじぎ」も記譜されているとのことで、聴衆にも受けている様子が録音からうかがえます。

最後の「双子座」では、この星座のもつ重要な特徴の「あそび」が存分に駆使され、メロディーの断片が様々な楽器、音域でスタッカートで演奏されます。それに対して常にレガートで繰り返し(様々な移高形で)演奏される冒頭の3音のモチーフが悲劇的なイメージを持つように聴こえるのは私の主観でしょうか?
最後、弦楽器のオクターヴでこのモチーフがフォルテで奏され、ヴィブラフォンによるコードが加わってホ短調のような響きになって突如終わるところが、余計にそうした印象を強めます。
いずれにせよ、この作品のエンディングはいささか唐突に感じます。あと2曲、どのように続いたのか聴く事ができないのが残念でなりません。

昨日は合唱団MIWOの名古屋での演奏会で、バッハ「ヨハネ受難曲」のイエス役を歌ってきました。
指揮者の大谷研二氏は今年初め、交通事故で生きるか死ぬかの重傷を負い、入院やリハビリのため演奏活動を休止していましたが、今回の演奏会で見事に「復活」しました。
まだ完治という訳ではありませんが、指揮ぶりは以前と変わらず安心しました。

そして、アマチュアとは思えない合唱団の驚異的なレベルの高さ、百戦錬磨の東京バッハ・カンタータ・アンサンブルの鉄壁のアンサンブルで、この作品を演奏者としても存分に楽しむ事ができました。
特にコンティヌオ隊のレチタティーヴォでのアンサンブル能力には脱帽です。歌い手がどのように歌っても完璧に合いの手を加え、歌詞の内容に応じた適切なアーティキュレーションで演奏してくれるので、ストレスを感じる事なく歌の表現に集中する事ができました。

ちなみに上の写真は滞在したホテルからとったものです。

さて、せっかく先月末のルシファーから昨日のイエスに無事「昇格」したにも関わらず、今月末はまたルシファーに逆戻りです。
シュトックハウゼンの一周忌を迎えるにあたり、アルバン・ベルク協会、東京大学などの主催でシュトックハウゼンの追悼企画で、「ルシファーの夢」の再演を行うためです。
私は、この他9月に演奏した「7つの日の歌」と「シュピラール」も再演します。
さらに清水穣氏らとともにシンポジウムのパネリストも務めますので、実は結構大変だったりします。

詳しい情報は以下をご覧下さい。

ちなみに「シュピラール」の演奏に関しては、クレジットはのっていませんが、有馬純寿氏に技術的な協力をお願いしています。いつも不安材料になる短波ラジオの受信状況にまつわる問題点を解決する糸口になればと考えています。

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日本音楽学会関東支部特別例会

シンポジウム+ワークショップ
「シュトックハウゼン再考」

期日 2008年11月29日(土)、30日(日)
場所 東京大学駒場キャンパス(井の頭線 駒場東大前下車)
    18号館ホール、18号館メディアラボ2
    コミュニケーション・プラザ北館2階・音楽実習室
主催 日本アルバン・ベルク協会、東京大学、日本音楽学会関東支部(シンポジウムのみ)
問合せ 日本アルバン・ベルク協会
    (aberggj1985@mb.infoweb.ne.jp
    TEL & FAX 03-5228-1835)
入場無料

29日(土) シンポジウムとワークショップ、演奏会

 ワークショップ1「演奏家から見たシュトックハウゼン作品Ⅰ:ピアノ曲Ⅰ~Ⅳほか」
    松山元 18号館1階 メディアラボ2 11:00~12:00

 シンポジウム「シュトックハウゼン再考~一周忌を前に」18号館ホール 13:00~16:00
    パネリスト:小鍛治邦隆、佐々木敦、清水穣、松平敬(50音順)
    長木誠司(司会)

 演奏会 コミュニケーション・プラザ北館2階・音楽実習室 17:00~18:30
    ピアノ曲Ⅰ~Ⅳ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ、Ⅹ
    IN FREUNDSCHAFTおよび ENTFUEHRUNG(sax)
    演奏  松山元(p)、近藤伸子(p)、白井奈緒美(sax)

30日(日) ワークショップと演奏会

 ワークショップ2,3
 2「演奏家から見たシュトックハウゼンⅡ:ピアノ曲《自然の持続時間》ほか」
    近藤伸子 18号館1階 メディアラボ2 13:00~13:40
 3「演奏家から見たシュトックハウゼンⅢ:《シュピラール》ほか」
    松平敬  18号館1階 メディアラボ2 13:40~15:00

 演奏会 コミュニケーション・プラザ北館2階・音楽実習室 16:00~18:00
    《ルシファーの夢(ピアノ曲ⅩⅢ)》(声楽・ピアノ版)
    《自然の持続時間》より
    《七つの日の歌》、《シュピラール》
    演奏 近藤伸子(p)、松平敬(vほか)

情報ソース:日本音楽学会・関東支部

ymamambo.jpg
ペルーの超人歌手Yma Smacが86歳で亡くなりました。ソース

この人の声を一聴して驚くのが驚異的な音域の広さです。
男声顔負けの重厚な低音から、小鳥が鳴いているかのような超高音まで軽々と歌い分けるテクニックは超人的です。バックのエキゾ音楽のいかがわしい雰囲気も相まって魅力倍増です。

この人の声を聞いた事のない人は、公式ウェブサイトの視聴ページ(ここをクリック)をご覧下さい。
とりあえず、このページのTaki RariやTaita Intyをお聴きになると彼女のテクニックが分かるかと思います。

YouTubeにも動画があったので貼っておきます。

心よりお悔やみ申し上げます。

昨日の近藤さんのリサイタルへのゲスト出演無事に終わりました。
ご来場下さった皆様、ありがとうございました。

最後に演奏した「ルシファーの夢」(=ピアノ曲XIII)一曲のみの参加で、歌う箇所こそ少ないものの、暗譜で演技を伴って演奏する都合上(オペラ「光の土曜日」の1場面です)、結局は約35分の全曲を把握しておかないと演奏できないので、何度も何度もCDを聴いて沢山練習しました。

練習の過程で、長大なこの作品の構造も理解し、より深く聴く事ができるようになったのも収穫でした。

タイトルの「死んだふり」は作品をご覧になった方だけがお分かりになるかとおもいますが、ルシファーの死をテーマとしたこの曲、一見ものすごくシリアスに見えますが、特に作品後半、本気かギャグか分からないような出来事が連続してあらわれます(もちろんその音響効果の美しさも忘れてはなりません)。
シュトックハウゼン自身による文章によると、実はこの作品ではユーモアが重要な要素となっているのです。

悪魔ルシファーというとおどろおどろしいイメージがあり、この作品も含む連作オペラ「LICHT 光」でももちろん悪役なのですが、彼の登場するシーンがしばしばコミカルに描かれている事は興味深いです。

実演を見て全曲笑いが止まらなかった「ルシファーの激怒」(光の月曜日)しかり、「光の日曜日」の美しい「DÜFTE-ZEICHEN」の中、バス歌手によって歌われるUD(土曜日の香り、印)の下品な「いびき唱法」しかり。
「暦年」(「光の火曜日」第1幕)でルシファーの仕掛ける誘惑も、裸の美女や豪華な料理といったベタで失笑必至な内容です。

敬虔なカトリック信者であるシュトックハウゼンにとって、ルシファーの存在は最も忌むべきものなのですが、そこに敢えてユーモアを交えることにより、その「毒性」を中和しているのかもしれません。

さて、1週間後にはイエスを歌わなくてはなりませんので、悪魔の毒気を薄めるとしましょう。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

プロモーション・ヴィデオ

ご購入は以下まで:
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