2009年8月アーカイブ

先日の湯浅譲二バースデーコンサートには満席のお客様にお越し頂き、大変ありがとうございます。客席からのものすごい熱気が感じられ、演奏する方にも気合いが入りました。

さて、アルバン・ベルク協会が毎年発行している『ベルク年報』第13号に私が執筆した文章が掲載されていますので、ご紹介します。

KLANG唯一の電子音楽作品《COSMIC PULSES 宇宙の脈動》についての作品紹介、アナリーゼなどについて書いた文章ですが、譜例や作曲者のスケッチを使ってできるだけ分かりやすく解説し、KLANG全体の概要の情報も掲載していますので、興味のある方は是非ともお読み下さい。

本号は、昨年のシュトックハウゼン生誕80年にちなみ、シュトックハウゼン小特集が組まれ、他にもシュトックハウゼンに関する文章が収められています。
私が直接かかわっているのが、昨秋、東大で行われたシンポジウム「シュトックハウゼン再考」の記録です。N響の機関誌『フィルハーモニー』に載っていたのはその抜粋でしたが、こちらにはその全体が収められています。

以上のものも含む、本号のシュトックハウゼン関連の記事を以下にまとめておきます。

・シンポジウム「シュトックハウゼン再考〜1周忌を前に」
    小鍛冶邦隆、佐々木敦、清水穣、松平敬、長木誠司

・一九七七年 東京で
 カールハインツ・シュトックハウゼン作曲ヤーレスラウフ(歴年)--リヒトより
 オリジナルヴァージョンの世界初演
    木戸敏郎

・パリのシュトックハウゼン 1952.1.16〜1953.3.27
    清水 穣

・シュトックハウゼンのピアノ曲について
    近藤伸子

・シュトックハウゼン《宇宙の脈動》について
    松平 敬

若きシュトックハウゼンのブーレーズらとの生々しい交流の記録をまとめた清水氏の文章も面白いのですが、LICHTのはじめに完成した雅楽のための作品JAHRESLAUFの作曲を委嘱した木戸氏の文章が、記録として非常に重要です。

作曲に際して、シュトックハウゼンが、雅楽の楽器の演奏音域内の全ての音を数秒ずつ録音して資料として送ってくれるように頼んだ話、一度は雅楽のために作曲する困難さのためにシュトックハウゼンが委嘱のキャンセルを打診したが、木戸氏が踏み留まらせたエピソード、初演時の聴衆の好意的な反応にもかかわらず、新聞などの批評文が悪意の感じられるほどの酷評だったため、肩身の狭い思いをした話(このことによって以後四半世紀の日本におけるシュトックハウゼン受容が停滞しました)など、当事者だからこそ語れる貴重な記録に満ちています。

軽くショッキングだったのが「音楽雑誌から依頼された原稿の中で少しでもリヒトを擁護することを書けば編集者から削除を要求されたりした」という下りです。一種の情報操作ともとれるような悪意を感じますが、私もかつてはそうした空気から作られたシュトックハウゼンに対する悪影響から逃れることはできませんでした。
そうした環境下で、たまたまCDで聴いた、このJAHRESLAUFに感銘を受け、ひょっとして巷で広まっているシュトックハウゼン批判はおかしいのではないか、と疑問をもった個人的な経緯もあるので、余計にこの木戸氏の文章は心に残るものになりました。

作品の時間構造などの詳細な解説も貴重です。

ご購入希望の方は、アルバン・ベルク協会、またはアカデミア・ミュージックまでお問い合わせ下さい。

ちなみに、私がとりあげた、《宇宙の脈動》の日本初演が決定しました。同じ演奏会で、3月にも演奏した《私は空を散歩する》の再演も行います。

同志社大学第36回外国文化週間コンサート

曲目:
シュトックハウゼン《テレムジーク》《私は空を散歩する》《宇宙の脈動》
2009年11月18日(水)18:00開演 京都府民ホールアルティ
出演:松平敬(バリトン)太田真紀(ソプラノ)有馬純寿(音響監督)

入場無料

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「大人の科学」がまたまたツボなふろくを出しました。今回のふろくは4ビット「マイコン」、非常に貧弱な仕様ではありますが、2500円でコンピュータが手に入るのは驚きです。

そして、この貧弱な仕様こそが、ツボです。
iPhoneより若干大きめの、手のひらサイズですが、クロック周波数4MHz、メモリ容量46バイトという驚きの小容量、入力は機械語を16進数でぽちぽち打ち込んで、出力装置は6桁の2進LEDと1桁の数字LEDとスピーカーという慎ましい仕様となっています。

ハードディスクのようなものはないので、ぽちぽち打ち込んだプログラムも電源を切るとすべて消えてしまうはかなさも潔いです。

LEDの光が左右に揺れ動くような簡単な動作ですら、面倒なプログラミングが必要ですし、かけ算させようとすると、かなりの工夫が必要となります。そうした作業の中で、ちょっとした手直しをするのも大変なので、パソコンのテキストエディタでプログラムを書き、それをネット上にいくつか出回っているアセンブラで機械語に変換して、ぽちぽち入力するという倒錯した手順を取ることになります。

こんな貧弱な仕様なのに、付属のスピーカーを有効利用すべく音楽機能も一応備わっていて、簡単なシーケンサでメロディーを自動演奏することができるところがちょっとした感動です。

このマイコンを4台くらい集めてローテクなテクノポップもどきが演奏できると楽しいかもしれません。
今年の講習会のマスター・クラスでは、昨年に引き続き《私は空を散歩する》を勉強しました。今回のポイントは、この曲の初演者であり、以降シュトックハウゼン監修のもとで10年以上この作品を演奏したHelga Hamm-AlbrechtとKarl O. Barkey両氏(今年の講習会の特別講師として呼ばれていました)の集中的な指導を受けることができたことです。この両氏は他にも《シュティムング》の初演も行っていますし、Helga Hamm-Albrechtは大阪万博での演奏のために日本に長期滞在もしている、シュトックハウゼン演奏の老舗といえる演奏家です。

昨年指導を受けたNicholas Isherwood氏もこの曲に関してシュトックハウゼンの直接の指導を受けているのですが、この両氏に比べると、同曲に関しては演奏経験が極端に違うので、極めて重要な機会になりました。

《私は空を散歩する》は、12の部分のテンポ、ディナーミクを、作曲者によって提示された指定の中から組み合わせ、他にも任意の名前を呼んだり特殊唱法を考えたりと、演奏者に委ねられる部分が多いのですが、その辺りの解釈法がレッスンの重要なポイントになりました。
スコアの指示を文字通り読めば、ルールの範囲内で自由にやっても良いはずなのですが、この両氏の経験では、ルールに従っていてもシュトックハウゼンが気に入らない場合がある、とのことでした。ある特定のフレーズには、シュトックハウゼンの強く思い描いたイメージがあり、それを壊すようなテンポやディナーミクの選択を行ってはいけない、そして逆に、そのイメージを表現するためには若干の自由(つまりルールからの部分的な逸脱)が認められる、ということでした。

レッスンの中心は、こちらが用意したヴァージョンのそうした面での問題点を洗い出し、テンポやディナーミクの若干の変更を施して改善していく作業でした。スコアだけからは絶対にわからない、演劇的なジェスチャーなどについても、シュトックハウゼンがどのような動きを具体的に指示したか、ということに関してアドバイスをもらいました。

この曲は、シュトックハウゼンの全作品の中でもスピリチュアルな側面が特に重要となっていて、彼の描いたイメージを明確に表現することがいかに大切か、ということを何度も繰り返し説明されました。

もっとも、この曲に限らず、シュトックハウゼン作品でいろいろな選択可能性がある作品には、スコアの指示だけからは分からない、微妙な制約があることはよくあります。
おもに、実際に演奏を重ねていく上で生じた問題点を解決する上で、そうしたスコアにない変更が施されることもありますが、作品数があまりに多くて、楽譜の修正が追いつかない問題点もあります。

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《ピアノ曲XI》は当初の、19の断片の演奏順をリアルタイムで決める、というコンセプトが(正確に演奏することが困難なため)却下されて、事前に作成した自分用のヴァージョンを演奏するとか(しかしこれは出版されている楽譜には記載されていません)、《ルフラン》、《ストップ》、《ミクストゥール》に関しては不正確なリアリゼーションに辟易して、自ら、確定された楽譜による新しい版を出版したり、ということがあります。
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この二人もシュトックハウゼンとリハーサルしながら、少しずつヴァージョンを修正し、彼らの間での「ベスト」を何年もかけて作り上げていった、と話していました。
シュトックハウゼン演奏には、テンポやアーティキュレーションを楽譜どおり厳密に演奏しなくてはいけない一方、口伝的要素もかなりあります。この作品はそうした要素がかなり強いので、私たちの世代がそれをきちんと受け継いでいかなくてはならない、とも痛感しました。

この二人の演奏を録画した非公式のDVDも頂き(残念ながら発売予定はないそうです)、よりよい演奏に向けて、改めて精進したいと思います。


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講習会の閉会式のあとには、会場として使われた学校の屋上の別々の箇所にのぼった5人のトランペッターが、《木曜日の別れ》を閉会のファンファーレとして演奏しました。
この作品は5つの部分に分けられたミヒャエルのフォーミュラ(の核セリー)を、長い休止を挟みながら、自由なテンポで繰り返し演奏するものです。
夕空のもと、あちこちから聴こえるロングトーンが不意に重なりあう様子はとても神秘的でした。



・今回のお買い物(抄)

CD:
CD92 KLANG14時間目《HAVONA》
Text-CD21 《短波》の大阪万博でのプライベート録音を収録

DVD:
INORI(1998年ダルムシュタットでの演奏)
VORTRAG ÜBER HU(2003年キュルテンでの演奏)
ZEITMASZE(1992年フランクフルトでの作曲者指揮、アンサンブル・モデルンの演奏)
MICHAELION(1998年シュトゥットガルトでの世界初演、以前VHSで出ていたもの)

文献:
Hermann Conen: FORMEL-KOMPOSITION(2009年増補改訂版)
Rudolf Frius: STOCKHAUSEN - DIE WERKE 1950-1977
Karlheinz Stockhausen: TEXTE vol.7-10

スコア:
KONTAKTEリアリゼーション・スコア(Stockhausen-Verlagからの新版)
YLEM
MUSIK IM BAUCH
AMOUR(クラリネット版)
KLANG5時間目《HARMONIEN》(バス・クラリネット版)
KLANG14時間目《HAVONA》

その他:
オルゴール(《ティアクライス》の〈さそり座〉)

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シュトックハウゼンのお墓(新しいものに工事中です)
丁度一週間後、以下のコンサートに出演します。
私が演奏するのは「R. D. レインからの二篇」一曲、5分あまりだけですが、今回は全曲別の楽器のためのソロ作品ばかり。名手揃いですので、きっとお楽しみ頂けると思います。
チケットは私へのメールでも受け付けております。
お時間ある方は是非どうぞ。

湯浅譲二バースデーコンサート【80歳の誕生日を祝して】

2009年8月12日(水)午後7時開演 (午後6時半開場)
東京オペラシティ リサイタルホール

料金:当日3500円、前売り(一般)3000円、前売り(学生)1000円
(学生券は前売りのみ取り扱い)

出演:
ジョージ・ヴァン・ダム(vn)、大久保彩子(fl)、佐藤佳子(va)、鈴木俊哉(rec)、橋本晋哉(tub)、藤田朗子(pf)、松平敬(vo)、山根孝司(cl)、吉村七重(koto)

曲目:
マイ・ブルー・スカイ第3番 (1977)
クラリネット・ソリテュード(1980)
タームズ・オヴ・テンポラル・ディーテイリング(1989)
ヴィオラ・ローカス(1995)
メロディーズ(1997)
テナー・レコーダーのためのプロジェクション(2004)
R. D. レインからの二篇(2005)
ぶらぶらテューバ (2006)
箏歌「蕪村五句」(2008)

チケット取り扱い:
東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999

主催、お問い合わせ:
アンサンブル秋吉台
シュトックハウゼンの遺作《ティアクライス》オーケストラ版の、今年6月の大阪での日本初演の模様が来週日曜日NHK-FMで放送されます。

放送日 :2009年 8月 9日(日)
放送時間 :午後6:00~午後6:50(50分)

この演奏会のために、私が書いた解説文もあらためて紹介しておきます。


ついでに、《ティアクライス》のシュトックハウゼン自身による版の録音(CD番号はシュトックハウゼン出版のもの)も紹介しておきましょう。

クラリネットとピアノのための版(1981) CD32
   Suzanne Stephens(cl), Majella Stockhausen(pf)

トリオ・ヴァージョン(1983) CD35
   Suzanne Stephens(cl), Kathinka Pasveer(fl, picc), Markus Stockhausen(tp,pf)

テノールとシンセサイザーのための版(2003) CD77
   Hubert Mayer(ten), Antonio Pérez Abellán(synth)

あとの版になればなるほどアプローチが大胆になっています。

《ティアクライス》は自分でどのように演奏するか決めて、自分自身のヴァージョンを作りますが、まずはこれらのヴァージョンを聞いて、どのようにメロディーを演奏しているか研究することが、良いヴァージョンを作るために必須でしょう。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

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ご購入は以下まで:
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