先日の湯浅譲二バースデーコンサートには満席のお客様にお越し頂き、大変ありがとうございます。客席からのものすごい熱気が感じられ、演奏する方にも気合いが入りました。
さて、アルバン・ベルク協会が毎年発行している『ベルク年報』第13号に私が執筆した文章が掲載されていますので、ご紹介します。
KLANG唯一の電子音楽作品《COSMIC PULSES 宇宙の脈動》についての作品紹介、アナリーゼなどについて書いた文章ですが、譜例や作曲者のスケッチを使ってできるだけ分かりやすく解説し、KLANG全体の概要の情報も掲載していますので、興味のある方は是非ともお読み下さい。
本号は、昨年のシュトックハウゼン生誕80年にちなみ、シュトックハウゼン小特集が組まれ、他にもシュトックハウゼンに関する文章が収められています。
私が直接かかわっているのが、昨秋、東大で行われたシンポジウム「シュトックハウゼン再考」の記録です。N響の機関誌『フィルハーモニー』に載っていたのはその抜粋でしたが、こちらにはその全体が収められています。
以上のものも含む、本号のシュトックハウゼン関連の記事を以下にまとめておきます。
・シンポジウム「シュトックハウゼン再考〜1周忌を前に」
小鍛冶邦隆、佐々木敦、清水穣、松平敬、長木誠司
・一九七七年 東京で
カールハインツ・シュトックハウゼン作曲ヤーレスラウフ(歴年)--リヒトより
オリジナルヴァージョンの世界初演
木戸敏郎
・パリのシュトックハウゼン 1952.1.16〜1953.3.27
清水 穣
・シュトックハウゼンのピアノ曲について
近藤伸子
・シュトックハウゼン《宇宙の脈動》について
松平 敬
若きシュトックハウゼンのブーレーズらとの生々しい交流の記録をまとめた清水氏の文章も面白いのですが、LICHTのはじめに完成した雅楽のための作品JAHRESLAUFの作曲を委嘱した木戸氏の文章が、記録として非常に重要です。
作曲に際して、シュトックハウゼンが、雅楽の楽器の演奏音域内の全ての音を数秒ずつ録音して資料として送ってくれるように頼んだ話、一度は雅楽のために作曲する困難さのためにシュトックハウゼンが委嘱のキャンセルを打診したが、木戸氏が踏み留まらせたエピソード、初演時の聴衆の好意的な反応にもかかわらず、新聞などの批評文が悪意の感じられるほどの酷評だったため、肩身の狭い思いをした話(このことによって以後四半世紀の日本におけるシュトックハウゼン受容が停滞しました)など、当事者だからこそ語れる貴重な記録に満ちています。
軽くショッキングだったのが「音楽雑誌から依頼された原稿の中で少しでもリヒトを擁護することを書けば編集者から削除を要求されたりした」という下りです。一種の情報操作ともとれるような悪意を感じますが、私もかつてはそうした空気から作られたシュトックハウゼンに対する悪影響から逃れることはできませんでした。
そうした環境下で、たまたまCDで聴いた、このJAHRESLAUFに感銘を受け、ひょっとして巷で広まっているシュトックハウゼン批判はおかしいのではないか、と疑問をもった個人的な経緯もあるので、余計にこの木戸氏の文章は心に残るものになりました。
作品の時間構造などの詳細な解説も貴重です。
ご購入希望の方は、アルバン・ベルク協会、またはアカデミア・ミュージックまでお問い合わせ下さい。
ちなみに、私がとりあげた、《宇宙の脈動》の日本初演が決定しました。同じ演奏会で、3月にも演奏した《私は空を散歩する》の再演も行います。
同志社大学第36回外国文化週間コンサート
曲目:
シュトックハウゼン《テレムジーク》《私は空を散歩する》《宇宙の脈動》
2009年11月18日(水)18:00開演 京都府民ホールアルティ
出演:松平敬(バリトン)太田真紀(ソプラノ)有馬純寿(音響監督)
入場無料



