2009年10月アーカイブ

本日も、中川さんのオーケストラの新曲の本番がありました。
昨日は中川さんの個展でしたが、本日は4人の作曲家による4曲の新曲からなるプログラムで、その内の一曲が中川作品でした。

中川俊郎《曲率》(演奏:小鍛冶邦隆指揮、東京交響楽団)

チケットは指定席だったのですが、よく見てみると最前列ほぼ中央。
オーケストラの演奏会で最前列は、音響的にあまり良い席とは言えませんが、まあ、いいかとそこで聴くことにしました。会場の東京芸術劇場は、舞台の高さも高くないので、弦楽器セクションの演奏の様子が手に取るように見えます。

1曲目の演奏が終わり、2曲目の中川作品の演奏の前に、ステマネがそでから何やら怪しげなものをステージ中央に運んできました。
それは、ソリストとして出演する中川さんの演奏する「物体」たちでした。おもちゃのキーボードのような一応楽器といえるもの、空き缶、はさみなどの非楽器などがごちゃごちゃと譜面台にのせられ、演奏前から怪しさ満点です。

そして、その時気がついたのが、私の座っていた席は、そのソリストの演奏位置の真正面、かぶりつきだったのです。

ソリストは登場しないまま演奏が始まりますが、見事に昨日演奏されたどの作品とも似ていない、しかし中川ワールド全開の脱力サウンドが始まりました。しばらくすると演奏中にもかかわらずオーケストラの奏者がなぜか立ち上がり、「ソリスト入場」です。

譜面台にところせましと載せられた様々な楽器、非楽器を次々と持ち替え奇妙な音響を発する中川さんの姿はユーモラスで、しばしば客席からも失笑がもれましたが、異質な音響をひとつの音楽に結びつけるセンスはやはりさすがです。
(ちなみにソリストのパートはオーケストラの楽譜を主催者に提出したあと、本番日ぎりぎりまで作曲していたらしいのですが、本人しか持っていないその譜面を昨日電車に置き忘れ、今日それを取りにいく時間も作れず、結局新たに楽譜を作り直した、というエピソードも中川さんらしいです)

やはりこの作品でもオーケストラの奏者にちょっとしたパフォーマンスをさせていましたが、弦楽器奏者に弓で譜面台の支柱を軽く叩かせるところなどは、演劇的効果だけでなく、おもしろい音響効果を出していました。

そしてクライマックスは作品後半、ソリストの中川さんが突如オーケストラの方に向き、「本物」の指揮者が指揮を続けているのにもかかわらず、勝手に指揮を始めます。
どちらの指揮をみて演奏しているのかは、謎ですが、中川さんのもっともらしい指揮ぶりはケッサクでした。

そして、昨日の都響と同様、本日の東響のメンバーからも中川さんのキャラは愛されていた様子が窺え、微笑ましかったです。

今年は、かなり他の仕事を控え、オーケストラ作品の作曲に集中していたようですが、それが良い作品、良い演奏に結実し、ご本人も満足されているのではないでしょうか。
昨日はサントリーホールへ「作曲家の個展2009 中川俊郎」へ行ってきました。
毎年、双子座三重奏団でご一緒している中川さんのオーケストラ作品がまとめて演奏される、ということで楽しみにしていましたが、中川ワールドをたっぷりと堪能しました。

中川さんとオーケストラ、というのはイメージとしてほとんど結びつかないな、と思いつつ、プログラム巻末の作品表をながめていたら、そこにのっていたオーケストラ曲は3曲、その内の2曲が昨晩演奏され、さらにそこにない新曲2曲が披露されたので、昨晩だけで中川さんのオーケストラ作品のほとんどを聴いてしまったことになります。

プログラムと演奏者は以下のとおりです。

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西村朗氏とのプレトーク

中川俊郎:
・合奏協奏曲第2番(1987/88)
・合奏協奏曲第3番(2009)[初演]

休憩

・もの思う葦たち(2003)
・影法師--F.シューベルトの同名の歌曲その他による(2008-09)[初演]

指揮:飯森範親 東京都交響楽団

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《合奏協奏曲第2番》は初演のライヴ録音がCDにもなっていますし、その時の聴衆たちからの強烈なブーイングの嵐も伝説となっていますが、私はむしろ楽しんで聴けましたし、しかし同時にその拒否反応したくなる原因も理解できました。

ちなみにプレトークでこの拒否反応についても話題になってましたが、武満徹、松村禎三などの大物作曲家が一様に完全拒絶といった面持ちだったのに対して、中川さんの師の三善晃は、ひょうひょうと、あのおもちゃはもっと前においた方が、よく聴こえたんじゃない?などとアドバイスしていた、というエピソードは今となっては微笑ましいです。

さて、この作品の楽譜は空白だらけなのですが、そこを各演奏者が即興演奏で埋める、という趣向をもっています。そもそも、記譜された楽譜を忠実に演奏するようトレーニングを積んだクラシックのオーケストラ奏者に即興演奏をさせる、という設定自体が無茶なのですが、作品解説に「即興自体も上手である必要はなく、まったく何をして良いか分からない人が、しかたなく何かをやる、というレベルの人がいて、全く構わない。逆に即興の達人が、一人で浮きまくるのもありである。」と書かれているように、即興演奏の技術の稚拙さも許容してしまうところが大きなポイントです。

そして、出てくる音はどのような音かというと、いくつかの目立ったフレーズはあるものの、端的に言えば、オーケストラの各奏者が本番前に各自バラバラに練習しているようなカオス的な音響に終始し、そこに明確な音楽の進行のようなものは存在しません。究極のデタラメに限りなく近いともいえる音響を聞いて、武満徹のような作曲家が強い拒否反応をしめすのはある意味自然かもしれません。

それでも不思議なのが、このカオスのような音響が単なる「うるさい」音になってしまわない、バランス感覚です。そして、このぐしゃぐしゃした音響の独特な肌触りもなぜか気持ちよくなってくるのですが、オーケストラの奏者たちが楽しみながら演奏していることも影響しているかもしれません。

そして、つづく《合奏協奏曲第3番》は、基本的には第2番と同じ音楽です。
違いは、第2番の空白部分に、作曲者が、即興演奏のためのガイド(具体的な音形やアイデアなど)が書き込まれているということです。つまり第2番で即興の部分だったところが、通常の記譜された楽譜に近づいているのですが、空白の即興部分も残されているとのことです(作曲家としては、まわりの様相が変わることによって、この即興部分の演奏内容に影響が及ぼされることも期待しています)。

第2番とこの作品を続けて演奏することによって、両者の違いを楽しめる趣向になっていますが、カオス的な印象は、即興性の低いはずの第3番の方がかえって強まったのが面白かったです。指揮者を含む各奏者が立ち上がったり客席を動き回ったり、突然モーツァルトのセレナーデを演奏し始めたり(しかしまわりの音とのバランスでほとんど聴こえない)、アナーキーさを強調させるような派手な音形が現れたりと、つまりは、無秩序な雰囲気を作曲者が巧妙に演出している、ということなのです。

この種のパフォーマンスは、オーケストラ奏者は嫌がることが多いのですが、若干悪乗り気味の飯森氏の指揮(+パフォーマンス)と、中川さんの憎めない人柄に刺激されてか、好意的に演奏していたのが印象的でした。

休憩をはさんで、《もの思う葦たち》は前半のカオス的な音響とはがらっと様相を変えます。
この作品のポイントは指揮者を含めた全奏者が同じ楽譜を使用する、ということです。しかもそのスコアは、単純な幾何学的な図形による図形楽譜、そこをどのように解釈するか、というのが演奏上の肝となります。
具体的にどのようなプロセスで演奏を作り上げていったのかは分かりませんが、楽譜に書かれた図形がある程度想像できるような演奏で、前半と真逆のすき間だらけの薄い響きを楽しみました。

最後の《影法師》は今回の演奏会でもっとも「まともな」作品、つまりきちんと記譜された作品です。タイトルにもなっているシューベルトの歌曲の、ピアノで演奏されるパッサカリアのテーマを始めとして、B-A-C-Hの音名象徴、モーツァルトの《ジュピター》の第4楽章のテーマなど、様々な(意図的、そして無意識に導き出した)十字架音形の引用を組み合わせて作品を構成する、という趣向ですが、一見伝統的に聴こえるこの作品に、中川さんの作曲家としての本領を見ました。
その組み合わせ方の和声的センス、透明感のあるテクスチュアなど、中川さんの演奏するピアノの音色を思わせる繊細さを強く感じました。

そして、今日はまた中川さんの別のオーケストラ作品の初演、この極端な初演のブッキングの偏りも中川ワールドといえるのではないでしょうか。
(終演後、楽屋に行ったら、今日の作品のスコアを電車に忘れてしまって、熱海まで取りに行かなければならない、との話を伺いました。さすがです)


さらに、11月29日の双子座三重奏団でも、中川作品を大量に演奏しますので、是非ともご来場下さい。
今月パリで、シュトックハウゼンが生涯の最後に作曲した遺作《続・5つの星座》(=《ティアクライス》オーケストラ版の後半)が演奏されます。

以下の情報をご覧になるとお分かりかと思いますが、指揮を担当するのは盟友ブーレーズです。ブーレーズは《グルッペン》《プンクテ》の初演を担当するなど、シュトックハウゼン初期の作品はよく演奏していますが、60年代後半以降の作品は私の知る限りでは彼のレパートリーに入っていないはずですので、今回の選曲は画期的といえるでしょう。

その他の作品はシュトックハウゼンにしてもリゲティにしても、「古典」といえる名作で、プログラミングにものすごく捻りがある訳ではないのですが、シュトックハウゼンの最初期の「点の音楽」である《クロイツシュピール》と《コントラ=プンクテ》の星のような響きが、星座を音楽にした《ティアクライス》とつながるというのが心憎いところです。

今月は《クラング》の6時間目《美》と12時間目《目覚め》の初演が、1週間のスパンで行われるなどシュトックハウゼン絡みのイヴェントが充実しています。

Salle Pleyel
252, rue du Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
 
17 OCTOBRE


Métro : Ternes, Charles de Gaulle-Etoile

17 octobre 20h
17€ à 45€, Abonnement 13,60€ à 36€
Durée : 1h30 plus entracte
 

Karlheinz Stockhausen
Kreuzspiel
Kontra-Punkte
Fünf weitere Sternzeichen
, création française
György Ligeti 
Concerto de chambre
Aventures et Nouvelles Aventures


Claron McFadden, soprano
Hilary Summers, contralto
Georg Nigl, baryton
Ensemble intercontemporain
Pierre Boulez, direction 
 

http://www.festival-automne.com/fr/programme.php?programme_id=280

私も出演(演奏)している高木正勝氏の映画《或る音楽》は、すでに東京をはじめあちこちで上映されていますが、京都、吉祥寺、沖縄での上映が決まりましたので、お近くにお住まいの方はぜひご来場下さい。

この映画にも収められているライヴ演奏から再構成されたCD《タイ・レイ・タイ・リオ》も好評発売中です。こちらもよろしければどうぞ。
それにしても、このプロジェクトからもう1年たつのですね。早いものです。



◯京都みなみ会館
2009年10月9日(金)~22日(木)
10/ 9(金)&10(土)=20:30~
10/11(日)~15(木)=17:40~
10/16(金)~19(月)=18:50~
10/20(火)~22(木)=21:15〜
◎料金・当日:一般1,700円 / 学生1,400円 / シニア1,000円
前売:1,400円

*10月9日(土)(上映後)
ヤノベケンジ(美術家)×高木正勝によるトークイベント開催決定!

京都みなみ会館
tel.075-661-3993


◯吉祥寺バウスシアター
2009年10月17日(土)~30日(金)21:00〜
◎料金: 一般1,500円 / 学生1,300円 / シニア・会員1,000円

*10/17(金)(上映後)
御法川修(映画監督)×高木正勝のトークイベント決定!

御法川監督が手掛けている最新作「SOUL RED松田優作」(http://yusaku-movie.com/)(11/7より公開)に、高木正勝が映像作品を提供。監督とのコラボレーションについてや、映像表現についてなどをうかがう貴重な対談の機会。
ぜひお出かけ下さい!

●整理番号の受付は当日 19:30より 受付開始

吉祥寺バウスシアター
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-23
tel.0422-22-3555


◯沖縄・桜坂劇場
2009年11月13日(金)~20日(金)19:00〜
◎料金:一般1,600円 / 大学・高校生1,300円 / 小中学生1,000円 / シニア1,100円
前売:1,200円

*上映記念ライブ開催決定!- 高木正勝ライブ+「或る音楽」上映
日時:11月15日(日) 開場13:00 開演13:30
会場:桜坂劇場ホールA
料金:前売3000円 当日3500円(全席自由)※要1ドリンクオーダー
プレイガイド:桜坂劇場窓口/チケットぴあ(Pコード:338-173)
ローソンチケット(Lコード85584)
問・電話予約:桜坂劇場098-860-9555

桜坂劇場
沖縄県那覇市牧志3-6-10
tel.098-860-9555
少し前に注文しておいた《テレムジーク》リマスター盤が届きました。
この音源の収められているのはシュトックハウゼン出版のCD全集(こちらは旧マスター)の方ではなく、レクチャーなどの音源を収めたText-CDのシリーズの第16巻です。

オリジナルの5チャンネルの音源は、技術的理由により現在は鑑賞に耐える音質ではないので、作曲当時作成したステレオ・ミックスが正規の唯一の音源となります。
CD全集の音源もこのミックスをもとにしていますし、今回のリマスターも同じアナログ・テープを使用しているので、劇的に何かが変わったということはありませんが、イコライジングは一聴してかなり手を加えているのが分かります。細かい相違点は、まだチェックしていませんが、全体に音像がすっきりした印象があります。

ちなみにこのリマスターは2007年11月18日に行われたとの記載がありますが、これはシュトックハウゼンの死のほぼ2週間前、この時期は《ティアクライス》オーケストラ版の作曲が進行中で、《モメンテ》のスコアが完成した時期でもあり、死の直前まで精力的に活動していたことが分かります。

さて、この音源、セールス・ポイントはリマスター音源を収録しているだけではありません。
メインの部分はシュトックハウゼンの肉声によるこの作品に関するレクチャー(ドイツ語)ですが、シュトックハウゼンが音素材で使った世界各地の民族音楽の録音が大量に収録されていることです。18種類の音源がそれぞれ数分ずつ収められています。

日本の雅楽、バリのガムランにはじまり、アフリカ、ヨーロッパ、ブラジルなどの音源が紹介されていますが、ヴェトナムの音楽が個人的には惹き付けられました。
この音源と《テレムジーク》の完成形を比べれば、どのようにシュトックハウゼンがこれらの音源を変容させていったか、つぶさに比較することができるでしょう。

ドイツ語を解さない方でも、この音源を聴くためだけに購入する価値があるといえるでしょう。

ちなみに、レクチャーの英訳はこちらで見ることができます。

11月の京都のシュトックハウゼン企画で演奏される《テレムジーク》はこの新マスターが使用される予定で、もちろんこのマスターによる日本初の演奏となります。
双子座三重奏団第5回.jpg
(クリックで拡大できます)

以下に、この双子座三重奏団のメンバーの情報をお知らせします。

トランペットの曽我部清典氏は本日4日来週11日午後6時より、NHK-FMの音楽に出演します。詳しい曲目は日付のところからリンクされた番組表をご覧頂きたいのですが、私にも関連があるのは来週11日の放送分で、双子座三重奏団の昨年の演奏会のライヴ録音が1曲放送されることです。本日放送分で川島素晴氏の《まつだいら家》が放送されるのも、私と関係なくはありません(演奏は曽我部氏のみですが)。

一方、作曲家にしてピアニストでもある中川俊郎氏は、10月中にオーケストラの初演が2日連続であるという超人的な状態になっています(うち一日は中川作品のみのオーケストラ作品個展)。

作曲家の個展2009-中川俊郎
2009年10月14日(水)19時開演、サントリーホール 大ホール
指揮:飯森範親
管弦楽:東京都交響楽団
リンク:主催者サイト

オーケストラ・プロジェクト2009
2009年10月15日(木)19時開演、東京芸術劇場大ホール 
指揮:小鍛冶邦隆 
管弦楽:東京交響楽団
リンク:主催者サイト

もちろん、双子座三重奏団の本番もよろしくお願いします。

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おしらせ

双子座三重奏団うるう日ライヴ
2012年2月29日19:00-
門仲天井ホール

双子座2012チラシtogo.jpg

中川俊郎:バッハーズ・アロウ
森田泰之進:こうふくのしま
鈴木治行:蛇行
山本哲也:スライドホイッスル三重奏曲
ケージ:ラジオ・ミュージック
ほか

出演:
曽我部清典(トランペット)
中川俊郎(ピアノ)
松平敬(声)

コンサート詳細はこちらまで

■タリス:40声のモテット
(一人の歌手による多重録音)

ご試聴、ご購入は以下まで
iTunes
e-onkyo music
OTOTOY

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》

 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006
平成22年度文化庁芸術祭
レコード部門優秀賞受賞作品

文化庁芸術祭シンボルマーク

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