この作品ではマルクス・クッターによる短い英語のテキストが作曲素材として用いられているが、この、そもそもそれ自身が非常に難解なテキストはいわゆる「歌詞」としては使用されず、抽象的な音響素材として音素の単位にまでバラバラに分解され再構築される。そのため、言葉としての意味がおぼろげながら分かる場面から、完全に抽象的なひびきとしてしか捉えられない場面まで、多彩な声の音色のパレットの上で移ろいゆくことになる。そしてその声の音色のパレットには笑い声や喘ぎ声といった様々な肉体的な感情を伴った唱法も含むため、この意味性のグラデーションはさらに複雑で多面的な様相を帯びることとなる。
