CD53 ヘリコプター弦楽四重奏曲

HELIKOPTER-STREICHQUARTETT(1992/93)
   for string quartet, 4 helicopters with pilots and 4 sound technicians
   4 television transmitters, 4 x 3 sound transmitters
   auditorium with 4 columns of televisions and 4 columns of loudspeakers
   sound projectionist with mixing console
   moderator (ad lib.)

演奏:アルディッティ弦楽四重奏団
録音:1995年(世界初演ライヴ録音)、1996年(スタジオ録音)
ミックス・ダウン:1999年


「水曜日」第3場面。4台のヘリコプターに乗った4人の弦楽奏者のための作品。
4人の演奏はヘリコプターのプロペラの音と共に聴衆のいる会場へラジオ中継され、ミキシングされる事により4台のヘリコプターのプロペラ音をともなった弦楽四重奏として成就する仕掛けになっている。それぞれの弦楽器はトレモロやグリッサンドを多用する事によりヘリコプターのプロペラの音と対応するように作曲されている。

離陸時に演奏される序奏部と着陸時に演奏されるコーダに挟まれた主要部では、ミヒャエル、エーファ、ルツィファーの「光」の3声のスーパー・フォーミュラ(とスーパー・フォーミュラの「水曜日」部分の断片)が大幅に引き延ばされて3回演奏されるが(3声の配置、音高、テンポは各回ごとに異なる)、それぞれの声部の各音を4つの楽器が交替しながら演奏するため、3つのフォーミュラが左右に複雑に交錯しながら聞こえる按配になっている。(公式サイトのこちらに楽譜の一部がのっているが8段ある楽譜の上4段がフォーミュラがどのように聞こえるか再構成した「観賞用」楽譜、下4段が各奏者が実際に演奏する楽譜になっている)
しかも前述の通り、こうした複雑な作業はほとんどグリッサンドを伴って行われるため、この3声のスーパー・フォーミュラの空間移動を聴き分けるためには、かなりの集中力を必要とする(そして当然このフォーミュラに親しんでいる必要もある)。従って、この作品は一般によく知られている割には、「光」の初心者にとっては完全に理解する事の難しい「上級者向け」の作品であると言えるかもしれない。
ただし、ルツィファーのフォーミュラに含まれる「アイーンス」「ツヴァーイ」などとドイツ語で数を数える部分は4人の弦楽奏者の声によって交替で「歌われる」ため、この部分の空間移動の効果は容易に聴取できるであろう。その他スーパー・フォーミュラにふくまれる「気息音」「クリック音」などの各種ノイズの指定も、弦楽器の特殊奏法に「翻訳」されて演奏される。

そして驚くべき事はこの曲芸のようなポリフォニーが、互いの演奏を聴く事のできない4台のヘリコプターで演奏されている、という事実である(会場から送られるクリック・トラックを聴いて演奏する事によってテンポを同期している)。一見簡単そうな数を数える部分でテンポがずれたらどうなるか考えればこのことは一目瞭然であろう。
会場に備え付けられた4台のヘリコプターからのモニタ映像、その上部のスピーカーを組み合わせる事によって、3声のフォーミュラの複雑な交錯の空間移動が、4台のヘリコプターの間で行われている事を視覚、聴覚の奏法から確認する事が出来るのだ。

この2枚組のCDには世界初演のライヴ録音とスタジオ録音の2種類の演奏を収録。
ライヴ録音には世界初演時のシュトックハウゼンの司会進行や演奏後の質疑応答なども収録されている。
スタジオ録音は、世界初演の後に書き足したホモフォニックなコーダ部分を含んだ改訂版による演奏。
(Auvidisレーベルからも同一音源のCDが発売されているがこちらはスタジオ録音のみを収録)

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